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ジュディ: +
千里: -

「えっと……」
やっぱりイヌの年齢に換算するんだろうなあ? とすると俺は──
「1歳だよ」
「ほえ?」
 ウサギの女の子は目を真ん丸くして聞き返した。
「ねえ、この格好での年齢でいいんじゃないの?」
 ジュディが耳打ちする。そういうことか。
「ああ、ごめんごめん。俺たち、こっちに来たばっかりなんだ。俺は17だよ」
 ウェイトレスの子はすぐに事情を察したと見え、にっこり微笑んでうなずいた。
「こいつはジュースでいいから。ボクは何にしよっかな~……。何かお勧めある?」
「じゃあ、店長自慢のカクテルはどう?」
「うん、それでいいや♪」
 ウェイトレスがテーブルを離れてから、ジュディに小声で訊く。
「おい、お前まさか飲むつもりなのか!? っていうか、飲んだことあんのかよ!?」
「ボクは一応大人だもん♪ お正月にご主人サマにちょっぴり甘酒を分けてもらったことあるから平気さ」
 やっぱり……。千里のやつめ(`´) その程度で、本格的なバーのカクテルなんか飲ませて大丈夫だろうか? 確かに年齢上こいつは成犬には違いないが……。
 どうでもいいけど、年上風を吹かされるのも癪だなあ。こっちは赤ん坊の頃からこいつを知ってるのに。
 ほどなく、バーテンの用意してくれたジュースが運ばれてきた。恐る恐る一口すすってみる。奇妙な味だ。何が混ざってるんだろ? 果物しか入ってないんだよな?
 グラスの中をのぞきながら目をしばたたいていると、不意にジュディが手を握ってきた。
「朋也ぁ……なんか、フワフワするよ……」
 既に目の焦点は定まらず、呂律も回ってない。ひょっとして酔ってんのか?? 言わんこっちゃない。そういや、甘酒にはアルコールなんて入ってないし、イヌはニンゲンよりアルコールに弱いんだっけ。
「おい、ジュディ!? ジュディに飲ませたなんて千里に知れたら、きっと俺がどやされるな……」
 フラフラになってもたれかかってきたジュディの肩を揺さぶりながら、朋也はウサギのウェイトレスに声をかけた。
「ウェイトレスさん! すいません、水をくれませんか?」
 そのとき、後ろの席のイヌたちの会話が途切れ途切れに耳に入ってきた。
「まったく気に入らねえぜ、あのネコ族め。ボスに取り入りやがって」
「なんであいつがナンバー2なんだよ? ネコの下に就いて指示に従うなんて、俺はぜってえ我慢できねえ!」
「大体、ユフラファのウサギどもに頭を下げるなんざ、デカイのは図体だけでとんだ小心者の証拠じゃねえか」
「まあそう言うな。ボスだってな、端から奴のことを信用してるわけじゃないんだ。ボスが心を開いてるのは俺たち同族だけよ。ただ神殿の完成を急ぎたいだけなのさ。そう、神獣が眠ってる間にな……。例のブツも手に入ったことだし、後は──」
 ボスってのはゲドの言ってたのと同一人物のことかな? 直接千里のことに触れてはいなかったが(まさか〝ブツ〟じゃないよな……)、おそらく同じ組織に違いあるまい。
「はい、お水持ってきたよ! 大丈夫? ひょっとしてお酒、初めてだったの?」
 ウサギ族の女の子がやってきてコップを朋也に渡した。心配そうにジュディの顔色をうかがう。
「本人は飲んだことがあるつもりなんだけど、実質初めてと変わらないよ」
「ちくしょ~、ミオのやつめ、朋也をいじめやがって。ご主人サマに言いつけてやるからな~……」
 ……。何を言ってんだかな、こいつは?
 コップを口元に持っていって水を含ませてやる。ジュディは軽くむせてからテーブルに突っ伏した。朋也は彼女の身体を起こし、火照った頬を軽くピシャピシャとはたきながら名前を呼んだ。
「おい、ジュディ! 俺がわかるか?」
「ご主人サマ……」
 潤んだ瞳で朋也を見上げる。まだ駄目みたいだ。
「ご主人サマ、どこ行ってたの? ボク、会いたかったよ!」
 言うなり、彼女は朋也に抱きついてきた。
「お、おい!? こら、バカ!」
「クゥ~ン……ご主人サマ、いい匂い♥ でも、変だな……ご主人サマ、朋也の匂いがするよ?」
 頭を擦りつけながら甘えた声を出す。昔のままだったら構わないけど、その格好になってからやられるのはちょっと……。
 と、そのときイヌたちのそばで元気のいい声が響いた。ウェイトレスの女の子だ。
「ねえ、オジサンたち、いまユフラファって言わなかった? そこ、クルルの村なんだよっ♪」
 その子は出身地の名が出てきたので話を聞きたがっただけなのだろう。だが、一党の中にいた神経質そうなスピッツが彼女の腕をつかみ、キャンキャン声で吠えかかった。
「やい、女! 他人の話を盗み聞きするんじゃねえ!」
「きゃあっ! ご、ごめんなさい。クルル、そんなつもりなかったんだよっ」


*選択肢    助ける    助けない

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