にぎやかな昼食が終わり、一行は再び村へ向かって歩みを進めた。草原の風景に溶け込むような目立たない萌黄色や褐色の葺き屋根が疎らに並んでいるのが視界に入ってくる。平屋が多いように見えるが、クルルによればどの家にも地下室があり、地下の方が居室も広いそうだ。クルルたちはウサギ族といっても正確にはアナウサギ族なので、種族の習性に合った作りといえる。
村の入口まで後少しのところに来て、クルルがみんなを振り返った。
「じゃあ、クルルは村のみんなに知らせてくるねっ!」
そう言うと、跳びはねるように駆けていく。ほぼ1ヶ月ぶりの帰郷で浮かれているのだろう。
「!? きゃうっ!」
短い悲鳴とともに彼女の姿が不意に消えた。なんだ!?
「おい、クルル!?」
朋也が叫んで一歩前に踏み出したとき、足元の地面が不意に崩れた。
「わっ!?」
落とし穴だった……。シートの上に路面と同じ土を敷いてわからないように見せかけていたんだろう。穴はそれほど深くなかったが、さすがに落ちるとき足首を挫いてしまった。
「あたたた」
ジュディもすぐ隣で尻餅をつき腰をさすっている。
ミャウも一緒だ。怪我はしなかったようだが。彼女が落ちた地面を見上げ飛び上がろうと身構えたとき、脱出の試みを阻むかのように網がかぶさり出口を塞いだ。朋也のほうを振り返り、お手上げだと肩をすくめる。
「ふゃあぁ~、出られなくなっちゃったぁ~~」
マーヤ……羽があるのになんで君まで付き合って落ちてんだよ?
数分後、穴の縁に大勢の人影が現れ、こちらをのぞき込んだ。長い耳のシルエットだけでウサギ族とわかる。
朋也は下から声をかけた。
「おおい、俺たち村にちょっと用があって来ただけなんだ」
「あたしたち、モンスターじゃないわよぉ~!」
「ねえ、クルルに話を聞いてよ!」
ところが、返ってきたのは問答無用の返事だった。
「嘘おっしゃい! 絶対だまされないんだから!」
「全部あんたたちの仕業だってバレてるんだからね!?」
「もう許さないわよっ!!」
そして、朋也たちは何一つ耳も貸してもらえぬまま、持ち物を取り上げられ……地下牢に放り込まれた──