またご主人サマのことを思い出したんだろう。彼女はきっと、朋也やミャウたちが構ってやらなければ、四六時中千里のことばっかり考えているに違いない。
いったいどうしたものかと朋也は思案した。声をかけてやるべきだろうか? しかし、今のジュディを千里に代わって自分が慰めるのは、差し出がましいような、あるいは荷が重いような気がした。たぶん、そっとしておくのが一番いいだろう。せめてハンカチくらい渡せればよかったのかもしれないが、あいにく朋也のポケットには入っていなかった……。
ひとしきり泣いて少しは気分が落ち着いたのだろう。目を少し赤く腫らしたまま、ジュディは扉の前に再び立った。後ろに下がると、勢いをつけて体当たりを試みる。2度、3度。いくら肩にパッドが付いてるとはいえ、痛くないわけがない。
「お、おい、ジュディ! 無茶はよせって!」
ジュディは憮然とした表情で振り返る。
「うるさい!! いつまでもこんな所にじっとしてなんかいられるか! 早くご主人サマを助けるんだ!!」
そう言いながら身体ごと扉にぶつかる。さらにもう一度タックルをしたとき、蝶番が外れて弾けとんだ。ジュディの身体は扉ごと表に投げ出された。
「うわあっ!!」
「おい、大丈夫か!?」
あわててジュディのもとに駆け寄る。怪我はどうやらなさそうだ。
「留め具がはずれかけてたんだな。ともあれ、でかしたぞ、ジュディ!」
「フン」
何もしてないくせに調子がいいぞ、とばかり鼻を鳴らす。
続いて残りの2人を隣の牢から解放してやる。錠は鍵がなくても外側からなら開くようになっていたため、手間はとらなかった。
「ふぇ~~、生きた心地がしなかったよぉ~」
何があったんだか……。この2人の組合せは今後避けたほうがいいのかも。
「そっちは2人きりでイチャイチャできてよかったわね!」
ミャウはむちゃくちゃ機嫌が悪かった。
「誰がこんなやつとイチャイチャするかよっ!」
……。誤解は解いたほうがいいと思うけど、何もそんな言い方しなくても……。
「ともかく、グズグズしないでご主人サマを助けに行こう!」
合流した4人がまさに地下牢を後にしようとしたときだった。誰かが階段を降りてくる音が聞こえてきた。なんてタイミングの悪さだ。形だけでも牢に戻って知らんぷりを決め込んだほうがいいだろうか!? それとも──