「う~ん……怖がったりして」
朋也の台詞を聞いて、ジュディは大きく目を見開くと、情けない声を上げた。
「どうしよう~!? ボク、なんだか会うのが怖くなってきちゃった(T_T)」
ちょっとショックを与えすぎたかな? 彼女を少しでもなだめようと付け加える。
「いや、冗談だって。千里のことだから、きっとすぐに慣れるさ」
「……ボク、嫌われちゃったりしないよ、ね?」
ジュディは念を押すように尋ねた。
「まだそんなこと心配してるのか? まあ大丈夫だって。きっと俺と同じで、こうやってジュディと話ができるのも悪かないって思うんじゃないかな?」
「うん……そうだよね……。ボクも、ご主人サマや朋也と直接話せるようになってよかったと思うよ。鼻の調子はまだイマイチだけど」
朋也に諭されて、やっと彼女も安心したようだ。ジュディの場合、自らの意思に拠らず変身した経緯もあるし、きっとまだ戸惑いが残っていたのだろう。それから、彼女は朋也に向かって少しはにかむように微笑んだ。
「……朋也。ボク、ご主人サマが1番なのは譲れないけど……朋也のことは、2番目に、その……好きだよ……」
2番目か……。千里の1番は不動の地位なんだから、光栄に思わなくっちゃな。
何を思ったのか、ジュディは不意に立ち上がると、さっきのように扉の前に立った。後ろに下がると、勢いをつけて体当たりを試みる。2度、3度。いくら肩にパッドが付いてるとはいえ、痛くないわけがない。
「お、おい、ジュディ! 無茶はよせって!」
ジュディは毅然とした表情で振り返る。
「いつまでもこんな所にじっとしてなんかいられない! 早くご主人サマを助けるんだ! そして……そして……また三人で一緒に遊ぶんだっ!!」
もう一度、身体ごとぶつかる。
「ジュディ……」
さらにもう一度タックルをしたとき、扉の蝶番が外れて弾けとんだ。ジュディの身体は扉ごと表に投げ出された。
「うわあっ!!」
「おい、大丈夫か!?」
あわててジュディのもとに駆け寄る。怪我はどうやらなさそうだ。おそらくプラクティスの効果が薄れて留め具が弱っていたんだろう。ともかく、おかげで脱出することができた。
「ハハ、やってみるもんだな!」
「エヘヘ♪」
得意そうに鼻をこする。
「でも、前にも言ったけど、千里に怒鳴られちまうから、あんまり無茶はしちゃ駄目だぞ?」
「うん……」
続いて残りの2人を隣の牢から解放してやる。錠は鍵がなくても外側からなら開くようになっていたため、手間はとらなかった。
「ふぇ~~、生きた心地がしなかったよぉ~」
何があったんだか……。この2人の組合せは今後避けたほうがいいのかも。
「そっちは2人きりでイチャイチャできてよかったわね! フン」
ミャウはむちゃくちゃ機嫌が悪かった。朋也たちの会話が聞こえていたのかもしれない。
「べ、別にイチャイチャなんてしてないよっ!」
ジュディが顔を赤くして弁解する。別にやましいことをしていたわけじゃないんだから、そんなにオロオロすることはないと思うが……。
「ともかく、グズグズしないでご主人サマを助けに行こう!」
合流した4人がまさに地下牢を後にしようとしたときだった。誰かが階段を降りてくる音が聞こえてきた。なんてタイミングの悪さだ。形だけでも牢に戻って知らんぷりを決め込んだほうがいいだろうか!? それとも──