「……まあ、俺でよければもちろん付き合うよ」
ミオは満足そうに頷いた。
2人はユフラファに帰ると、他の3人から預かった装備を返した。
「これ、ホントに改造されてんのかよ? あんまり変わってない気がするなあ……」
「ちゃんと鍛冶屋に頼んだわよ。ねえ、朋也?」
「あ、ああ……」
中途半端に切り上げてきたのは確かだけど……。
その夜、晩飯を済ませみんなが部屋に引き揚げてから、朋也とミオは村を脱け出した。明日が月蝕なだけに14夜の今晩は月がやけにまぶしく、昼と変わらぬように思えたほどだ。朋也としては闇夜の中を行動するよりはありがたかったが。
北にある船着場に行く。そこには小さなボートが1艘もやってあるきりだった。食事中にさりげなくクルルに聞き出したところでは、島には民家もなく、村人がたまに薬草を採りに行く程度だという。危険なモンスターが出るようになって、島に赴く機会はめっきり減っていたようだが。
島までは20分ほどで着くので、専ら朋也がオールを握る。波もなく穏やかな湖面に月光が映える。聞こえるのは彼の漕ぐ櫂の音ばかり。
ミオの目は爛々と輝き、尻尾はゆっくりと規則正しい往復運動を繰り返している。今の彼女が何のことを考えてるのかはよくわかった。鉱石のことしか頭にないんだろうなあ……。彼女のほうが昼間ビスタで会ったキツネ族よりよっぽどハンターに向いてるんじゃないだろうか?
ほどなく島に到着する。島自体1周するのに1時間もかからない小さなものだった。岸辺には草が高く生い茂っていて、見通しはよくない。島の中央付近には薬草が群生しており、モンスターが出没するのもその辺りだという。草を掻き分けながら慎重にそちらの方へ歩を進めていく。ミオは耳をクルクルとあちこちに動かし、ヒゲをピクピクさせながら、周囲の気配をうかがっていた。
やがて草叢が途切れ、島の真ん中にポツリと1本だけ生えている木立が目に入る。2人は木の近くへ行き、互いの背後をかばうようにしてモンスターの出現を待った。
不意に、身の毛もよだつ奇怪な鳴き声が辺りに響き渡った。夜中に聞くと心臓に悪い……。周囲の草叢に視線を這わすが、動きはない。
不意にミオが叫んだ。
「朋也、上!」