「き、君は!」
「オルドロイには行かせない。お前にはここで生き埋めになってもらおう」
「くっ……君は一体何者なんだ!? なぜ俺たちの邪魔をするっ!?」
「わかりきったことを。お前がニンゲンだからだ。他に理由があると思うか?」
相変わらず氷のように冷たい目で朋也を見据える。やっぱり予想どおりニンゲンへの憎しみが彼女を突き動かしているのか……。
彼女もトラたちの組織の一員なんだろうか? もっとも、ビスタではイヌ族の3人組を平然と蹴散らしていたし、ユフラファでのウサギたちに対する言動を考えても辻褄が合わなかった。単独で朋也の妨害をしているのか、それとも紅玉をめぐって他にも動いている連中がいるのか?
「せめて名前ぐらい名乗ったらどうだ?」
「酔狂な……ここで死ぬ者に名を名乗ったところでどうなるというのか? だが、いいだろう。私はモノスフィアで名も力も持たなかった。この世界でその2つを手にした。お前にそれを知らしめてやろう。私はカラス族のリルケ」
リルケか……とりあえず覚えておこう。ここで死なない前提で。
「ねえ、リルケのお姉さん! クルルたち、あなたと闘う理由なんてないよ!? お願いだからここを通してよ!」
イヌたちに絡まれていたところを助けてもらった恩義のあるクルルが懇願する。
「……おしゃべりの時間はおわりだ」
それ以上こちらの話に聞く耳も持たず、リルケは鉱石を取り出すと呪文を詠唱した。大気が捩じれ、凝集する。鳥族の得意とするターコイズの魔法だ。無数のつむじ風が朋也たちに襲いかかる。
「うわっ!!」
「きゃああっ!!」
クルルがすかさず魔法を反射するスキルを発動したが、リルケの強大な魔力の前には無力だった。身動きもできぬまま3人は身を刻まれていく。
しかし、ターコイズの本当のターゲットは彼らではなかった。地鳴りとともに、道の両側の岩盤が一気に崩れ落ちる。朋也たちはヘロヘロの状態のところにもってきて、土砂に足をすくわれ、流されていった。
「お遊びはこれまでだ──!?」