コンパニオンだの何のといくら気取った呼び方をしようが、端的に事実を言えば、彼女たちイヌネコは人間にとってのペットだ。2人の関係は飼い主と飼いネコの関係に他ならない。それ以外の表現は不適切な気がした。
「ペット……になるんだろうね。他に言いようがないよ。もちろん、こっちで飼い主を気取るつもりはさらさらないけどね」
「ふむ。至極もっともな回答だが……それが君自身の答えだとすると、ミオの君に対する興味はかなり割り引いて考える必要がありそうだな……」
何やら興が冷めたような口ぶりだ。だから、何が言いたいんだよ?
カイトがそれ以上質問を続けなかったため、今度は朋也のほうから訊き返した。
「で、そういうカイトのほうはどうなんだい? 君はミオの何なんだ?」
彼は朋也のように考え込むまでもなく即答した。
「僕かい? 僕は彼女の恋人だよ」
……。フ、フン、近所付き合いでもストーカーでも言いようによっちゃいくらでも言えるからな……。朋也は努めて動揺すまいとした。だが、次の彼の台詞は決定的なものだった。
「2人は愛し合っていたからね」
2人は愛し合っていたからね……2人は愛し合っていたからね……
彼の宣告が割鐘のように耳の奥でこだまする。
そんな……信じたくない。主人としてそんな不純な交際は断固許さんぞ! 大体、朋也は2匹が一緒にいるところなんて一度も見たことがない。
いや、待て……そういえば、カイトを目撃した直後にミオがひょっこり現れて甘えてくることは度々あったな……。こんなことならやっぱり室内飼いにしとくんだった。
ショックのあまり、周囲も目に入らず呆然と立ち尽くす。マーヤもクルルも彼の有様にきょとんとしている。
「どうかしたかい? 君にとやかく言われる筋合いはないと思うがね?」
カイトがすました声で訊く。
そうだ、落ち着くんだ。そもそもネコ同士の恋愛を自分たちニンゲンの尺度で計ろうとするのは間違っている。向こうの世界ではもちろん十分認識してるつもりだったが……。
「そ、そりゃもちろん、飼い主としては恋愛の自由は、み、認めるとも」
強がって見せるが、声はすっかり上擦っていた。
「……朋也。エデンではね、種族の違いは決して乗り越えられない壁ではないのだよ?」
え……それって!? ぽかんと口を開ける。カイトはそんな朋也の表情を面白がるように先を続けた。
「つまり、君がその気になれば、ミオと愛し合うことだって不可能じゃないってことさ。もちろん、同族同士に比べると障害ははるかに大きいがね。どうだい、僕のライバルになってみる気はあるかい? 今の彼女に異性としての興味はないのか?」