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「レトリーバスター!!」
 ベスの打ちふるう大剣の一撃に屈し、トラの鉤爪が折れる。飛び散った爪先の破片が床にぶつかり乾いた音を立てた。勝敗は決した。
「フン、口ほどにもないな」
「ク……こんなクズ野郎に負けるたあ、俺もヤキが回ったもんだ……」
 余力を残したつもりだったが、朋也たちとの戦いで消耗しすぎたのかもしれない。いずれにしても、トラはベスを甘く見すぎていた。
「最後まで口だけは減らなかったな」
 ベスはそう言いながら、目に冷笑を浮かべて後ろの壁にあるスイッチを押した。と、トラの頭上から激しい炎が噴き出した。
「ぐわあああっ!!」
 トラは全身を炎に包まれ、火だるまと化した。
「くくく……そいつはただの火じゃない。紅玉の魔力とニンゲンへの憎しみを帯びて火の竈でくすぶり続けたフェニックスの炎だよ。どうだね、トラ。君がその完成のために一身を捧げたオルドロイの聖なる劫火を浴びた感想は? せっかくだから、君にも仲良しのウサギたちとともに神鳥再生の糧となってもらおう。せめて安らかに眠るがいい。フッフフ、フハハハハ!!!」
 高笑いを残し、身悶えするかつての同志の脇を通り過ぎてベスは儀式の間に入っていった。



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