千里とジュディはどうせ一緒にいるに違いない。むしろ2人水入らずのところを邪魔しない方がいい。ミオも1人に慣れてるししっかりしてるから、ほっといても平気だろう。クルルは心配だが……ともかく早く村に送り届けてやる以外にない。
ただ、マーヤのことはずっと気になっていた。ゲドとトラの葬儀を済ませた後、一度彼女を見かけたが、彼女のほうは朋也と千里の姿を見た途端、一言も口をきかず逃げるように飛び去ってしまった……。
パーティ中ただ1人の妖精として、浮いていた部分もあったかもしれない。だが、朋也たちがエデンに迷い込んで右も左もわからず困り果てていたところを助けてくれたのはマーヤだ。ジュディが命を取り留めたのも、ミオに再会できたのも、千里を救出できたのだって、マーヤがいてくれたからこそだった。
だから、彼女にはちゃんと感謝の気持ちを伝えたかったし、いろいろ疑惑の目を向けたことも謝りたかった。彼女の、というより神獣の容疑については、未だに釈然としないものが残っているが……。そして、ヒト族の1人として、フェニックスをあんな姿に変えてしまったことも。
広い神殿の中をいくつもの部屋をのぞきながら駆け回った挙句、朋也はやっと彼女の姿を見つけた。マーヤは3階のテラスの欄干の上にちょこんと座って月をながめていた。
「マーヤ……」
マーヤは押し黙ったまま朋也を振り返り、表情も変えずにじっと彼の顔を見据えたが、そのまま月に視線を戻した。口を閉じていることのほうが少ない彼女が無言でいると、ホントに落ち着かない……。
朋也が辛抱強く待っていると、マーヤはやっと口を開いた。
「……神鳥様はねぇ、偉大な3神獣の中でも最も気立てが優しく、心穏やかで、慈悲深い方だったのぉ。だから、エデンの民にも一番慕われていたのよぉ……。といっても、智の神獣キマイラ様をも上回る力も秘めていたのぉ。あたしたちが闘ったのは神鳥様の脱け殻……あんなものじゃないわぁ……もっとも、その力を行使したことは一度もなかったけどぉ……。きっとその優しさにつけこまれて、何かの秘薬か秘術でもってあんな姿に変えられてしまったのねぇ。それで、正気を失っている間に紅玉のアニムスも奪われ、封印が解かれたのねぇ。かわいそうな神鳥様ぁ……。あんなに優しかった神鳥様が、心を失くし、骸に成り果てて、未来永劫あのまま……」
最初は落ち着き払っていたものの、次第に感情が昂ぶってきて声が震える。
「……ニンゲンなんか……ニンゲンなんか……大ッ嫌いよぉーーっ!!!」
朋也に向かって吐き捨てるようにそう喚くと、羽の模様を盛んにフラッシュさせながら、大粒の涙を振り撒いて泣き始めた。
「うわあああぁぁぁあぁあぁああぁあああぁぁぁああぁぁあああぁあああ~~~~~~~~~~~~~っっ!!!(T_T)3」