「同じ選択肢持ってくるニャンて、芸がニャイニャ~」
「仕方ないじゃない。作者が思いつかないんだもの」
「あのぉ……」
「こら、2人とも! フィルが困ってるだろ? ああ、ごめんな、フィル」
ミオと千里をたしなめてから、あらためてフィルに頭を下げる。
「今度もまた世話になっちゃったね。あんな怪物の相手までさせちゃうし……。本当になんてお礼を言っていいか」
「いえ、とんでもない。お役に立てたなら光栄ですわ」
「それにしても残念だな……時間さえあれば、もっとゆっくりエルロンを見て回れたのに。隠れ里も捜してみたかったんだけど……。ジュディを助けだしてこの件が片付いたら、また遊びにこなくっちゃな」
「ええ、是非いらしてください。その時もエスコートさせていただきますわ」
「ああ。もちろんフィルを指名させてもらうよ♪」
「こらこら、なごんでる場合じゃないでしょ?」
つい会話が弾んでしまい、千里が癇癪を起こす。別に少しくらいいいじゃんか。あ~あ、フィルとは結局1日過ごしただけでお別れか……と朋也が名残を惜しんでいると、彼女は意外な申し出をしてきた。
「……あの、朋也さん。今回は私もレゴラスまでお供させていただきたいのですが」
てっきりここで別れるつもりでいた朋也は、フィルの意外な申し出にびっくりした。
「えっ、いいのかい!? そりゃ、フィルにこの先も一緒に来てもらえるんならものすごく助かるよ! でも、森から離れちゃっても大丈夫なの?」
「その点はご心配なく。実は、先ほど神木と連絡を取ったのですが、クレメインの森の木々の総意を得て、今から私は自由に移動できるようになりました。エルロンを始めエデン中の草木たちがリソースの一部を貸してくれていますから」
「へえ、そいつはすごいや!」
「三獣使が不可侵の禁忌を破ったことを神木は重く見ています。契約の無効を言い渡してきたのは神獣のほうですし……。いま、このエデンで何かとてつもなく大きな事態が進行しようとしています。森の耳目となってそれを見届けるのが私の役目……。これは神木の……クレメインの森の意思なのです」
「そりゃ、神獣が不穏な動きをしてれば、君たちが不安に思うのも無理ないよな……。よし、一緒にレゴラスへ行って確かめよう!」
「まあ、回復係をどっかで調達しニャきゃって思ってたから、ちょうどよかったけどニャ~♪」
ミオがペロリと舌を出す。
「ミオ~~」
こうして、クレメインのメッセンジャー・フィルがエデン中の森の代表者として朋也たちに同伴してくれることになった。心強い味方を得て、一行は次の目的地、シエナの街を目指した──