「同じ選択肢持ってくるニャンて、ほんとにさんざんだニャ~」
「仕方ないじゃない。作者が思いつかないんだもの」
「あのぉ……」
朋也があわててミオと千里をたしなめる。
「こら、2人とも! フィルが困ってるだろ? ああ、ごめんな、フィル。それにしても、今度もさんざんだったよ。エルロンの精には会えないし、おにぎりの食いすぎで胸焼けはするし、夜中にあんなやつと戦わされて寝不足になるし……」
「朋也ってほんとに無神経なんだねっ!」
「まったく呆れちゃうわ!」
「朋也さんのいけず……」
フィルがボソッと口にしたとどめの一言(一体どこで覚えたんだろ?)はこたえた。さんざんだ……。
イジケてる朋也を尻目に、彼女は千里に向き直った。すでに彼はリーダーと見られていないらしい……。
「……千里さん。今回は私もレゴラスまでお供させていただきたいのですが」
てっきりここで別れるつもりでいた一行は、フィルの意外な申し出にびっくりした。
「えっ、本当!? もちろん、フィルにこの先も一緒に来てもらえるんならとても助かるわ! けど、森から離れちゃっても大丈夫なの?」
「その点はご心配なく。実は、先ほど神木と連絡を取ったのですが、クレメインの森の木々の総意を得て、今から私は自由に移動できるようになりました。エルロンを始めエデン中の草木たちがリソースの一部を貸してくれていますから」
「へえ、そいつはすごいや!」
それを聞いて朋也も感心する。
「三獣使が不可侵の禁忌を破ったことを神木は重く見ています。契約の無効を言い渡してきたのは神獣のほうですし……。いま、このエデンで何かとてつもなく大きな事態が進行しようとしています。森の耳目となってそれを見届けるのが私の役目……。これは神木の……クレメインの森の意思なのです」
「そりゃ、神獣が不穏な動きをしてれば、君たちが不安に思うのも無理ないよな……。よし、一緒にレゴラスへ行って確かめよう!」
「まあ、回復係をどっかで調達しニャきゃって思ってたから、ちょうどよかったけどニャ~♪」
ミオがペロリと舌を出す。
「ミオ~~」
こうして、クレメインのメッセンジャー・フィルがエデン中の森の代表者として朋也たちに同伴してくれることになった。心強い味方を得て、一行は次の目的地、シエナの街を目指した──