通りを挟んで喫茶店の向かいに酒場の看板が目に入った。情報収集といえば酒場が基本、ということでとりあえず入ってみる。
朋也はビスタの酒場で自分の正体がニンゲンとばれたときのことを思い出した。けど、今回は仲間が4人もいるし、門番だって通してくれたんだから大丈夫だろ。
テーブルにやってきたのはウサギ族の女の子だった。ウサギ族はやっぱりウェイトレスの引き合いが多いんだろうか? 何やらいかがわしい店にいるような気がしないでもない……。
「いらっしゃい♥ ご注文はお決まりかしら?」
20代前半と思われるその子は、まだ幼さの残るクルルと違い、鼻血が出るほどナイスバディだった。
「変ニャとこジロジロ見つめてニャイでさっさと注文しニャさいよ!」
ミオに肘鉄を食らう。
「えっと、俺はオレンジジュースで」
「あたいはマタタビカクテルね」
「クルルはキャロットジュースにするよ」
「ボクはミルクでいいや」
「あたしは蜂蜜サワーねぇ~。蜂蜜は3人前入れてねぇ~♪」
「おかわりはなしだぞ」
朋也が釘を刺すと、マーヤは唇をとがらせた。
「わ、わかってるわよぉ~(--;;」(注)
ウェイトレスはここで同族のクルルに声をかけた。
「ところで、あなた見かけない顔ね? どこの出なの?」
「クルルはユフラファだよ! お姉さんは?」
「へえ、ユフラファ? じゃあ、大陸の西から来たんだ。私は地元がシエナなの。ウサギ族の集落っていえば、ユフラファとインレが有名だけど、どっちもまだ行ったことないのよねぇ」
「インレ?」
クルルはキョトンとして聞き返した。
「あら、知らないの? おかしいわね、ユフラファのほうが近いはずなのに……」
彼女は名刺を差し出した。
「今はお仕事中だからゆっくり話せないけど、聞きたいことがあったらいつでも家に来ていいわよ?」
「うん! ありがとう、エシャロットのお姉さん」
彼女の名前か。肩越しにチラッとのぞこうとすると、クスッと笑って朋也にも声をかける。
「あら、お兄さんも私の家に遊びにきたい?♥」
「あ、いや、俺はいいです。ハハ」
ミオに腕をギュッとつねられながら朋也は首を振った。
(注):ビスタの酒場でマーヤが同伴だった場合のやり取り。