こんな夜中にそんなオバケ屋敷みたいなとこ行きたかないよ。朋也は夜歩きに出たミオを尾行する計画を着手する前から放り投げた。
「何だ、行かないのかい? せっかく期待してたのに損したなあ」
部屋に引き返そうとした朋也に、ネコ族の男が声をかける。何が言いたいのかよくわからん奴だな。無視してそのままホテルの中に入る。
「彼女、せっかく準備してたのに、がっかりするだろうなあ。オバケが恐いなんて言ってるようじゃ、僕たちの一族の女の子と付き合う資格ないよねえ……。まあいいや♪ そういうことなら僕が彼女をもらっちゃおっかなあ? デートの約束もしたことだし♥」
翌朝──
朋也はホテルの前でミオとばったり顔を合わせた。念のため確かめてみる。
「夕べは一体どこほっつき歩いてたんだ?」
「うっさいわね、どこへ行こうとあたいの勝手でしょ!?」
ジロリとにらみつける。メチャクチャ不機嫌だな。やっぱり訊かなきゃよかった。
そこへ夕べ噴水の前にいた男が現れて彼女に近づいてきた。
「やあ、カワイコちゃん♥ こんな意気地なしほっといて早速デートにでも行こうか。いい店知ってるんだ♪」
「シッシッ!」
ミオにハエの如く追い払われ、そいつは萎んだ風船みたいにしょぼくれて去ってしまった。
2人とも、ミオとの交際権を手に入れる資格試験には落第したようである──