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 帰り道は飛ばす理由もなかったのでトロトロ走っていたこともあり、シエナに着いた頃にはもう日はとっぷりと暮れていた。ホテル前の噴水の側には、例のネコ族の男はいなかった。あんにゃろめ、今度会ったときにはただじゃおかないからな!?
 フロントに入ると、女性陣が怖い顔をして待ち受けていた。
「朋也! あんた、こんな時間まで1日中どこうろついてたのよ!? 今日はみんなでポートグレーに行くまでの間のスケジュールを立てるはずだったでしょっ!?」
「そうだよ! みんなして捜し回ったんだからね!」
「え? いや、俺は、その……そ、それより、ミオは夕べどこ行ってたんだ??」
 千里たちの剣幕にしどろもどろになりながら、ミオに救いを求める。
「あたい? 別に。ちょっと散歩に出たけどすぐに戻ってきたわよ? どうして?」
「話を逸らすんじゃないの!!」
「誤魔化すところを見ると怪しいニャ~……ひょっとして夕べからずっとガールハントでもしてたんじゃニャイでしょうねぇ?」
「じょ、冗談だろ!? そんなこと……」
「じゃあ、どこ行ってのか言いなさいよ!?」
 女の子たちに詰め寄られ、朋也は何とかこれまでの行動を説明しようと試みた。
「えっと、夕べはミオを捜して、イゾルデの塔に行って、オバケに襲われて──」
「ほほう……。あんなとこにわざわざオバケに会いに行ってたんだあ。それから?」
 千里の目は完全に自分を信用していない。
「ウーのピラミッドに行って、そしたらケルベロスが出てきて──」
「なるほど……。イヌの首が3つあったとか言うんでしょ? で、その後は?」
「ユフラファに寄ったらゲドたちにこてんぱんにのされて、ちょっと一休みしてインレに行って、そこで雪男みたいなヘンな怪物に雪玉をぶつけられて、それで帰ってきたんだ」
「ふむふむ……。今度の件と何の関係もない大陸の端っこの雪山に行って、雪男と雪合戦してきたって言うのね? いい加減になさいっ!!!」
 千里の手に魔力が集中し始める。このモードはヤバイ……。
「嘘吐くんニャらもう少しマシニャ嘘吐いたら?」
「そうだよ、まったく。ねえ、フィル?」
「そうですねぇ……。アリバイとしての信憑性はほぼゼロかと思います」
 フィルまで……。
「本当なんだってば、信じてくれよ~!? 噴水の前にいたネコ族の男に聞いてくれればわかるから」
「どこにいるのよ、そんなやつ?」
「だから、夕べ俺が出たときはいたんだって!」
「……さて、次のメニューから好きなの選んでいいわよ。1.飯抜き。2.今晩外で寝る。3.私の魔法の練習台になる──」
「だから、嘘じゃないんだってば~!」
「あら、3番がいいの? じゃあ早速今から始めましょうか♪」
「あたいも手伝ってあげるわね♪」
「ちょ、ちょっとま──」
 2人に引き摺られるように連行される。クルルもフィルもにこやかに送り出すばかりだ。
 かくして朋也は小1時間ばかり地獄を味わう羽目になったのであった──


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