この塔は間違いなく呪われている。さっきの亡霊自体が呪いそのものを体現しているように彼には思えた。1秒でも早くここから出たかった。
「ごめん、俺、やっぱり無理だ……1人で帰るよ……」
朋也は目を逸らしながらうつむき加減に言った。
千里は1つため息をつくと、それ以上朋也を非難することなく、あきらめたようにうなずいた。
「……そう……わかったわ……。みんなと準備だけお願いね。シエナを発つ前の日に迎えに来てちょうだい」
「気をつけろよ……」
朋也はそれだけ言うのがやっとだった。後ろ髪を引くような思いでその場を離れると、とぼとぼと塔の正門へと引き返していく。
千里は泣きたくなるのをこらえて、きっと前を見据えた。
「さっきは私のこと護るって言ってくれたのに……。やっぱり男の人に頼ろうなんて考えちゃダメよね……。私がしっかりしなきゃ! ジュディはこの手で必ず取り戻してみせる! 必ず……!!」
1つ武者震いして気を引き締め直すと、鍵を握る人物・イヴの待つ屋上を目指し、千里はたった1人で塔を上っていった──