「ううん……どうしようか……。フィル、言っちゃってもいい? 実は俺たち、付き合ってるんだ」
「ええ~っ!? 本当ニャの、フィル?? 朋也が勝手に勘違いしてたりしニャイ?」
びっくりして大声を上げるミオに萎縮しながらも、フィルは小声ではっきり答えた。
「ええっと、あの……ほ、本当です……」
3人ともしばらく開いた口が塞がらず絶句する。
「森の精が堂々と恋人宣言するニャンてアンビリーバブルだニャ~。どうやって奥手の貧血を口説いたんだか……」
ミオはまだ信じられないという面持ちで、2人を交互にながめながらブツブツ呟いている。朋也の一番近くにいる立場上、2人のムードに薄々勘づいてはいたものの、ここまで急速に進展するとは思っておらず、だいぶショックを受けてるみたいだ……。
「やるじゃなぁ~い、フィルゥ! 森の精がニンゲンの恋人をゲットするなんて画期的だわぁ~♪ 憎いわねぇ~~、このこのぉ~♥」
マーヤは知己の大胆な行動を讃え、小さな肘で彼女を小突き回す。
「よかったね、フィル!」
クルルは素直に2人を祝福した。
「さ、さあ、ともかくクレメインの森も無事に護れたことだし、みんなでいったんシエナに戻って出港の日に備えよう!」
朋也はどやされて頭を掻きながら皆に促した。
もう宣言もしちゃったし、後には引けないや……。恥ずかしそうに身を寄せるフィルの横顔を見ながら、朋也はふと考えた。
彼女との関係を自分はいつまで続けられるんだろう? もし、自分たちがモノスフィアに帰ることになったら、エデンの森の精である彼女を連れていくことは不可能だもんな……。
いいや、今は先のことを心配しても始まらない。千里たちを救出するために神獣キマイラと交渉するという難題が控えているのだ。もう2人でゆっくりする機会は持てないだろうけど、せめて彼女と一緒にいられる時間を大切にしよう……そう思う朋也だった──