仕方ない……他の乗客を待たせるわけにもいかないし、グズグズしていたら千里を助け出す時間もなくなってしまう。
「……あきらめよう」
朋也は観念したようにうなだれて言った。
「ミオ、置いてっちゃうの?」
クルルが悲しそうに訊いてくる。
「しょうがないよ、遅刻するバカネコが悪いんだから! きっと今頃になって臆病風にでも吹かれたんだろ」
ジュディはそう吐き捨てるように言いつつも、入口のほうに目を凝らす。
臆病風か……朋也は黙って考え込んだ。ミオに限って怖気づいたりはしないと思うが……。でも、カイトと傷つけ合うことを怖れたという理由なら考えられなくもない……。
朋也たちが乗り込むと同時に汽笛が鳴り、船は港を離れた。
次第に遠ざかっていく岸壁を呆然と見つめながら彼はうめいた。なんてこった……土壇場に来てミオと別れ別れになってしまうなんて──