「まあ、寂しくなかったっていえば嘘になるな……」
答えてから自分で言ってて恥ずかしくなり、誤魔化すようにほっぺをポリポリと掻く。
「でも、千里が1人で頑張ってるんだから、俺がわがまま言うわけにいかないもんな。それに、千里に会えなくて一番寂しがってるのはジュディなんだし……」
「うん……。これで私も自信がついたし、早速ジュディを取り戻しに行きましょう!」
微笑んでうなずく。
「ウフフフ……2人とも本当に仲のよろしいこと……」
見つめ合う2人を後ろでながめていたイヴが笑みを漏らす。神獣に制約を受けている彼女は戸口の外に足を踏み出すことはできなかったが。
朋也は彼女に向かって改めて礼を述べた。
「イヴ、千里が世話になりました。彼女、連れてきますね」
「ありがとう、イヴ! ジュディは必ず助け出してみせるわ! その時は、彼女を連れてまたお礼に来るわね」
千里もペコリと頭を下げる。
「朗報を待っています。気をつけてお行きなさい」
手を振って別れを告げ、一行はイゾルデの塔を後にした。千里の恩師である彼女をあんな場所にたった1人で残していくのは気が引けたが……。そうだ、カイトたちやキマイラとの交渉が成立してうまくジュディを返してもらえたら、イヴを解放してもらえるよう頼んでみよう。彼女はもう十分すぎるほど罪を償ったはずだし……。
若い同族の男女を自らに枷をはめたエメラルドの神獣のもとへ送り出したイヴは、彼らの後ろ姿を目を細めて見つめながら1人ごちた。
「頼みましたよ、2人とも……」
5人はオーギュスト博士の遺産である3台の乗物の前に集まった。
「さて、どういう割り振りで分乗するの? リーダーが決めてちょうだい」
ミオが朋也に促す。
3人乗りのサファイアの片側の座席に荷物を載せることは決まっていたので、サファイア2、エメラルド2、ルビー1の配分になるが……。朋也はエメラルド号のサドルにポンと手を置いた。あの晩以来、こいつに一番愛着を抱くようになっちゃったからなあ。
「千里」
サイドカーを指差しながら名前を呼ぶ。
千里は黙ってニッコリ微笑みながら頷いた。それを見ていたミオは、一瞬悲しそうな目をして長いため息を吐いた。
「ま、千里に負けるのはしょうがニャイか……」
「後はミオがルビー、クルルがサファイアでフィルを乗っけてもらうのでいいかい?」
「了解」諦め顔でしょうがないと両手を挙げる。
「OK!」
5人はそれぞれ決められた座席に着いた。
「よし、それじゃポートグレーに向けて出発っ!!」