「戯言ばかり言うな! ミオの心に闇なんてあるもんか! 第一、そんなことアニムスともモノスフィアとも関係ないだろ!? 何が世界をプレゼントする、だ! カイト、お前、狂ってるよ!!」
朋也は彼に向かって喚いた。そうだ、あいつの心に闇なんてあるわけがない。こいつがイカレてるだけなんだ……。自分に言い聞かせるように心の中で繰り返す。
カイトは目を細めて朋也を見つめると、額に手を当ててかぶりを振った。
「……まったく、何だってミオはこんな奴なんかに──」
そして、迷いを断ち切るようにカッと目を見開く。
「わかったよ……そういうことなら、今ここで彼女の気の迷いを断ってやる!!」
呪文の詠唱に入る。朋也たちは直ちに応戦態勢をとった。クルルが魔法反射のスキルを発動する。
「ジェネシスッ!!」
来た! いきなり最強呪文かよ……。だが、跳ね返されて自滅するのはお前のほうだぞ? こっちにはダイヤもあるし──と思っていたら、島中を覆うほどの閃光と咆哮が4人を見舞った。
「うわあっ!!」
「きゃあああっ!!」
反射スキルはまったく役に立たなかった。彼のに比べれば、千里のジェネシスも1ランク下のトリニティくらいに思えるだろう。クルルもジュディも息も絶え絶えだ。これが神獣から得た魔力なのか!? フィルがセラピーを発動して、朋也は何とか持ちこたえたが、すかさずカイトが懐に飛び込んでくる。
「ハハハハッ!! キマイラの霊力を手に入れた僕にかなうと思ってるのかい?」
ネコ族の奥義、九生衝だ。といっても20コンボは下らなかったが……。反撃どころか、1撃もガードできない。それも、フィルが物理防御の特殊スキルを発動してくれたにもかかわらずだ。種族スキルも防御力も朋也が重点的に鍛えてきたはずなのに、彼の前ではまるで歯が立たなかった。弄ばれるネズミのように、あっという間に全身をズタズタに切り裂かれていく。
「情けないな、朋也。君は僕を狂っていると言ったが、その狂った相手にこのザマか?」
膝を折って肩で息をする朋也を蔑むように見下ろしながら、カイトは決着が着いたことを宣言した。
「これで思い知ったろう? 君には彼女を愛する資格すらないってことを……。さあ、もうおしまいにしよう。この場で彼女の記憶から君の存在を消し去ってあげるよ!!」
再び魔法の詠唱。どうやらもう1発ジェネシスをお見舞いするつもりらしい。くっ、このまま為す術もなくやられちまうのか……。だが、もう立ち上がる力さえ残っていない。気力を振り絞って、今にも自分にとどめを刺そうとしているライバルを見上げる。
そのとき、朋也は驚きに目を見張った。そこに〝彼女〟がいたからだ。音もなくカイトの背後に忍び寄る。そして、彼女は手にしたサーベルで(あれはリルケの持っていたものだ)、彼の胸を一息に貫いた。