死んだ恋人の横顔を見つめながら、まだ体温の残るビロードのようなグレーの毛皮をなで続けるミオの前で、朋也も無言で頭を垂れた。愛する人の手にかかって本望、か……。きれいな死に顔は、それがカイトの本心だったことの証だろう。
「ありがとう、ミオ。助かったよ……」
ミオはきっと朋也をにらみつけた。
「あんたが弱いから、どっちか選ばニャくちゃニャらニャくニャッたのよ……」
それを言われると立場がないな。どんなに努力したって、神獣の力を手に入れたスーパーキャットに勝てるとは思わなかったけど……。恐縮してうなだれる。
「それで……俺を選んでくれたのか?」
「別に、もうどうでもいい感じだけど……」
目を逸らして額を押さえる。……バカなこと言っちゃったかな? 彼女にとっては辛い選択だったに違いないのに……。
彼女は彼を腕に抱いたまま徐に立ち上がると、厳しい目で朋也の顔を見据えた。
「いい、朋也? あんたにはもっと、もっと強くニャッてもらわニャくちゃニャらニャイわ……でニャきゃ、キマイラにニャンか勝てっこニャイ……」
そのままカイトの亡骸を抱いて広場を引き返していく。一行も後に従った。花畑に穴を掘り、リルケの亡骸とともに並べてそっと土をかぶせる。5人は静かに手を合わせて2人の冥福を祈った。
ネコに、カラスに、イヌに、ヒトに、死後の世界というものがあるのかどうか、朋也にはわからなかった。でも、もしあるとすれば……どの種族だろうと、前駆形態だろうと成熟形態だろうと、どちらの世界の出身だろうと、きっとみんな同じところへ行くんだろうな……。
「行きましょう、千里のところへ……キマイラはこの向こうよ」
思いを断ち切るかのように、ミオは進んで神殿の中に入っていった。朋也たちは彼女の後に続いた──