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 朋也は自分の耳を疑った。いまの……彼女がしゃべったのか? それじゃあ、やっぱりジュディも……。嬉々として2つの宝玉を見上げる彼女の後ろ姿を呆然と見つめる。
「俺も……そうだったのか?」
 朋也のつぶやきに、ミオはゆっくりと後ろを振り向いて静かに答えた。顔には今まで見せたことのない、貪欲なほど生き生きとした笑みを浮かべて。
「朋也……あんたは誰よりも役に立ってくれたわ。こうして2つのアニムスを手中にできたのは、ほとんどあんたのおかげと言ってもいいくらいよ……。カイトが言ってたとおりね、これであたいは理想の世界を創るの。気に入らニャイやつらはみんニャ始末してやる! とくに──」
 そこで彼女は千里の顔を真正面からきっとにらみ据えた。
「そこの女ッ! あんたが一番目障りニャのよ!! いつも朋也にまとわりついて……」
 ミオがここまで自分の内に秘めた感情をあからさまに示したのは初めてだった。激しい憎悪──いや、嫉妬なのか? 確かにミオと千里はしょっちゅうケンカが絶えなかったが、朋也はてっきりそれも仲がいい証拠だと思っていた。まさか、あいつがここまで彼女のことを嫌っていたなんて……。
「……それで、ジュディも殺したの?」
 ミオの視線をはねつけるようににらみ返しながら、声を押し殺して千里が尋ねる。
 ミオはなぜかどうでもいいというように目を逸らし、気のない素振りで早口に答えた。
「フン……あのバカイヌには真っ先に消えてもらったわよ。だって、あたいの邪魔ばかりするんだもの」
 抑えていた怒りをついに爆発させて、銃口を向けながら千里が叫ぶ。
「朋也……たとえあんたが止めても、私はジュディの仇を討つわよっ!!」
「待ってください。彼女はいつも私たちが接しているミオさんではありませんわ」
「見てほら! アニムスの力がミオにどんどん流れ込んでるよ!」
 クルルたちの言うとおりだった。2つのアニムスから彼女に向かって紅と碧の光が渦を巻きながら流れ込んでいく。まるでアニムスに意思があるかのように──それとも、彼女の意思に呼応しているのか……。いまのミオからは、先ほど相手をしたエメラルドの守護神獣をも上回るほどの強大なオーラがあふれ出していた。
 ミオは朋也の目を見ながら微笑んだ。
「朋也。それでも、あんたは……あんただけは、生かしといてあげるわ。奴隷に……いえ、ペットにして、一生可愛がってあげる。だって──」
 両手を精一杯彼に向けて差し出す。
「あたいはあんたを愛してるんだもの!!」


*選択肢    俺も愛してる!    お前なんか俺のネコじゃない!

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