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千里が立ち去り、アニムスの塔には朋也とジュディの2人だけが残された。
 朋也は千里の後ろ姿から、一緒に彼女の背中を見送っていたジュディに視線を移した。
「さて、と……ジュディをどう料理するかは、俺がみんなから一任されたわけだが……」
 しかつめらしく腕組みする。
「り、料理しちゃうの?」
 身をすくめて目をつぶるジュディにゆっくり近づくと、朋也はそっと腕を回した。最初少し身を固くしたものの、しばらくして彼女は力を抜き、彼に全身を預けてきた。
「……あったかいや……。ご主人サマとは違うけど、いい匂い……」
 心から安堵した声でつぶやく。朋也はやさしく彼女の髪に触れ、あやすようにささやいた。
「最後はちょっとハプニングだったけど、千里を助けるために今までよく頑張ったな?」
「朋也が……そばにいてくれたからだよ……」
「千里が生き返ったのはきっと、ジュディの一途な想いにアニムスが応えたからなんだろうな」
「そ、そうかな? エヘヘ……」
「俺、ときには周りが見えなくなっても真っすぐな、お前のそういうところが好きだよ」
「朋也……」
 驚いたように少し身を離し、彼の目を見る。
 さりげなく口をついて言葉がポロリと出てしまった。でも、この際思い切ってもう一段アタックしてみよう!
「なあ、ジュディ……。俺と、一緒に暮らさないか?」
「え!?」
 明らかに戸惑ったような表情を見せてから、少し上目遣いに訊いてくる。
「……ボクで……いいの?」
「こっちも、俺でよければ、だけど……」
「ボク……その……あの……どうしよ……」
 顔を赤らめて、モジモジしながらうつむく。朋也はチラッと視線を下に移した。
「……じゃあ、そういうことで決まりな♪」
「えっ!? ちょ、ちょっと! ボク、まだ返事してないのに……」
 抗議するジュディに向かって、朋也は悪戯っぽく片目をつぶってみせた。
「ジュディの答えは、尻尾を見ればすぐにわかるからな」
「もう! 朋也のバカァッ!!」
 そのとき、不意に空をたゆたっていたコロナが消え、まばゆい光が差し込んだ。皆既日蝕の中心蝕が終わったのだ。天上のダイヤモンドリングは、絆を取り戻した2人を祝福するかのようにきらめいた──


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