朋也は駄々をこねる子供のように首を振って喚いた。
「俺は嫌だっ! マーヤがたとえキマイラのホムンクルス、アルテマウェポンだったとしても、俺にとってはやっぱり一番大切な人だ。だから、彼女を傷つけることなんてできないよ……」
頭を抱えてうめく朋也の肩をフィルがたたいた。
「朋也さん……残念ですが、いまのマーヤはもう私たちの知っているマーヤではないのですよ? 彼女はもうここにはいないのです。〝あれ〟は、遺伝子に書き込まれたプログラムに従い、敵を破壊するまで攻撃し続けるという命令を実行するだけの〝機械〟にすぎません」
フィルの思いもよらぬ言葉に、朋也はつい激昂して怒鳴った。
「フィル、君は彼女の友達じゃなかったのか!? 〝機械〟だなんて、よくもそんなことが言えるなっ!?」
「朋也っ!」
ミオに叱責されて、彼はハッと気づいた。フィルが目にうっすらと涙を浮かべているのを。表立って感情を表すことの滅多にない樹族のメッセンジャーが涙を見せたのは初めてだった。朋也に出会うまで笑ったことさえなかったというのに……。そう、マーヤとフィルは、朋也たちと知り合うまでは、お互いに唯一無二といってもいい親友の間柄だったのだ。
「ごめん、フィル……。俺の言いすぎだった」
彼女に向かって頭を下げると、みなを振り返る。
「わかったよ……。俺たちの世界を消滅させるわけにはいかない。だけど、止めるだけだからな?」
「そんなこと言わなくても初めからわかってるわよ。誰もマーヤちゃんを傷つけるつもりはないわ」
千里がうなずきながら言う。
6人の仲間は互いをバックアップできるよう円陣の隊形を組んで臨戦態勢に入った。
「よし……じゃあみんな、行くぞ!!」