最初に念入りに防御を固めておいたのが幸いし、仲間たちは辛うじて無事だった。無傷とはとても言いがたかったが。そんな!! マーヤがこんな恐ろしい、惨たらしい技を何の躊躇もなく行使してくるなんて……。朋也には自らの苦痛より、そちらのほうが驚きだった。爆風を受けても一人で平然としていた彼女を呆然と見つめる。
「もう……嫌だ……」
朋也はその場にくずおれてうめいた。誰に対するでもなく、涙声で訴える。
「これ以上、彼女を苦しめないでくれ!! 彼女に仲間たちを傷つけたり、世界を滅ぼさせるような真似をさせないでくれ!!」
そのとき……アルテマウェポンと化してから凍りついたように無表情だったマーヤの顔がかすかに笑みを浮かべ、目に光が灯った。
「……朋……也ぁ……」
"彼女"だ!! たとえ意思系統の一部にしろ、どうやって"席"を確保できたのかは知らないが、間違いなくそれはマーヤの主人格だった。
「……ごめんねぇ……あなたのこと苦しませてぇ……でもぉ、もう大丈夫だからぁ……」
≪バカな!? 上位に位置する遺伝子のコードに反して意思を優先させることなどあり得ぬはず!≫
コピーキマイラが驚愕の声を上げる。マーヤは朋也の側を離れると、ルビーのアニムスのほうに向かっていった。
≪#9109557! いや、マーヤ! 何をする気だ!? バカな真似はよせ!! そんなことをするためにお主に特権を授けたわけではないぞ!?≫
神獣は玉座でも見せなかったうろたえた声で彼女を制止しようとした。最後の切札の叛逆は予想外だったのだろう。
「あたし、あなたのこと好きだから……あなたの大切な人たちを……あなたの大好きな世界を、失わせはしない……きっと護ってみせるからぁ!! 警戒レベル5へ移行!!!」
まだ上のレベルがあったのか!? それも1つすっ飛ばしてる……。彼女がこれまでに見せた潜在能力はまだ全開には程遠かったことになる。
マーヤの巨大な金色の羽が強烈に輝きだす。しまいには目も開けられないほどになった。その眩しい光の中で、紅玉に変化が起こった。周りを球形の光の膜が包み込み、ルビーの紅い輝きをすっぽり覆い隠してしまう。球の表面にはまるでツルツルの鏡でできているように周りの風景だけが映されている。一体何が起こったんだ!?