「こんにゃろ~、よくも朋也を! 前のクルルにはビスケットの恩があるけど、許さないぞ!」
ジュディが飛燕剣を打ち込む。
「きゃっ!」
悲鳴とともに、クルルのオーラはまたもとのサファイアの色に戻ってしまった。
「何やってんのよ、バカイヌ! 今の、見てニャかったの!?」
「え?」
朋也はいったん後退してマーヤとフィルに回復を施してもらった。フィルに向かって尋ねる。
「今のは一体!?」
「……おそらく、クルル本人の人格は神獣の人格の下に眠らされているのではないかと……。今のは主人格が一時的に表層に出てきたのでしょう。催眠状態で意識は働いていないようですが……」
「それじゃあ、もしかしたら!?」
「戦ってるうちに、〝彼女〟に出てきてもらうこともできるかもしれない?」
千里が後を引き継ぐ。フィルは少し思案してからうなずいた。
「おそらくは。少々危険な賭けになるかもしれませんが……」
「よし、やってみよう!」
一か八か、クルルが戻ってくる可能性に朋也も賭けてみることにした。
「みんな、バックアップを頼む!」
そう言うと、また1人で飛び出していく。朋也は蹴りを繰り出すごとに一声ずつ訴えかけた。〝彼女〟に自分の声が届くように。
「クルル! 俺がわかるか!? 一緒にユフラファへ帰ろう! おばさんの所へ! みんなの所へ!」
クルルの見た目の表情には何も変化はない。だが、オーラは少しずつ揺らぎ始めているように見えた。
「ウサピョンソバットッ!!」
オーラの青が強まり神獣モードになったときを見計らい、もう1度スライリ直伝の必殺技を繰り出す。今度は入った。
一瞬よろめいたクルルの胸から、サファイアの光がほとばしる。な、何だ!?
キマイラとフェニックスを保護したのと同じ繭だった。そして──3神獣の繭が同時にまばゆい光とともに消失する。彼らは戦闘開始前とまったく同じステータスを取り戻していた……。
≪無駄な足掻きはよせ。3頭の神獣を相手に無限に戦い続けられると思っているのか?≫
キマイラがたしなめるように口にする。彼らが同時に攻撃してこなかったのは、朋也たちに自らの無力さを思い知らせ、無謀な抵抗をやめさせるためだったのだろう。
「ウソピョォォ~~ン!?」
「駄目だ、3頭ともピンピンしてるよ!」
ミオは手を下ろすと、すっかりあきらめ顔になって朋也に言った。
「……キマイラの言うとおりだわ。あたいたちには千パーセント勝ち目はニャイ……。悔しいけどね」
千里もうなずく。
「朋也、あきらめましょう。彼女はもう、私たちの手の届かない神獣になっちゃったのよ……」
そんな……さっきはほんの少しでも出てきてくれたのに……。