千里です。
今日はジュディとミオちゃんと3人で原宿に繰り出してます。ショップをブラブラした後は、品川シーサイドにオープンしたポートグレーブランドの美味しい海鮮料理を食べにいって、その後TDLにハシゴというかなり強硬なスケジュール……。でも、ずうっと羽を伸ばす機会がなかったので、今日は1日とことん遊びぬいてやるぞ! って、今から3人とも気合入ってます♪
あれから──そう、世界が1つに合わさったあの日から、何もかもがいっぺんに変わってしまいました。
まず、地理がぐちゃぐちゃ……。170年前(──と、これはエデンの暦でした……。モノスフィアの暦では約7千年前です)に2つの世界が分かれたときに、アニムスの力が解放された影響で地形がだいぶ変わっちゃってたんだけど、それがまた1夜にして一緒くたに合わさったからもう大変! ユフラファは北関東の辺りに突然出現するし、クレメインの森は富士の樹海をすっぽり覆っちゃうし、シエナはニューヨーク、ビスタは北京とごちゃ混ぜになっちゃう有様。もちろん、朝目覚めてみたら、街中に2本足で立って歩くイヌやネコ、ウサギたちがあふれていたのが、みんな何よりショックだったようで……。
それから後はホンットにてんやわんやでした。何しろ、俗に≪七日戦争≫って呼ばれる戦争まで起きちゃったんですから。たぶん、歴史の教科書にずっと書かれていくんだろうな……。その戦争のカードは、黒装束の2人組のアクマ(もちろん朋也とリルケの2人のこと──朋也は制服のまんまだったの。バレないようにネコのマスク被ってマント羽織ってたから、カイトみたいでちょっとカッコよかった♥)率いるエデン軍v.s.70億の人類を代表する地球防衛軍(すなわち国連&どっかの国を中心にした多国籍軍)。ま、本当に代表してるとは言えないけど、最近バラバラでどうしようもなかった世界の国々がここまで一致団結したのは、これが最初で最後だったでしょう……。というのも、国家っていうのが今ではただの番地になっちゃったからなんだけど……。
戦闘には私たちお馴染みのパーティーの面々や妖精部隊も参加したけど、地球防衛軍側の必死の抵抗を抑え込んだのはほとんど2人の力でした。ニンゲンたちはスキルも魔法も使えず生命力も弱かったし、近代兵器の類もP.E.が働いてないおかげでたいして恐くなかったから、勝つこと自体は難しくなかったんだけど、朋也が戦闘員含め死者を出さない方針を打ち出したもんだから、そっちのほうが骨が折れました。後で苦労しないために正しい判断だったのは確かだけど……。結局どうしたかというと、2人は幻覚による精神的ダメージを与える召喚魔法で兵士たちの士気を根こそぎにする方法を使ったの。で、7日目に入って自軍が不利になったのを見て取った某国の大統領が、ニンゲンの市民に犠牲が出るのさえ厭わずに核ボタンを押しちゃったもんだから、リルケが大激怒。ちなみに、核ミサイルをジェネシス1発で葬り去ったのはこの私です、エッヘン♪ ホワイトハウスに乗り込んでそいつを裸にひん剥いて吊るし上げ、衛星放送で全世界に映像を流しちゃったの……。こうして7日戦争はエデン軍の完全勝利で幕を閉じました。
戦後処理のほうはもっと大変でした。1年経った今でもリルケや妖精たちはまだ悪戦苦闘しています。当たり前だけど……。悲しいことに、戦闘での死者を自滅を除いてゼロに抑えたにも関わらず、ニンゲンが万物の霊長から成熟形態の種族の1つに格下げになることを受け入れることができず、自殺した人が数十万人、それより一桁多い数百万人が精神に異常を来たして療養を受けることになってしまいました……。今までの仕組みや考え方を根本的に引っ繰り返すのって、なかなか難しいことなんだなあ。リルケは国家や宗教なんてくだらんものは全部潰せと息巻いてたんだけど、朋也がそれをしちゃうと自殺者がもう1、2桁増えちゃうからって、何とか宥めて妥協してもらいました。もっとも、実在する神である守護神獣を目の当たりにしちゃえば、いずれ自然消滅の運命をたどるのは目に見えていたけれど……。そもそも、170年前に世界を1つ手に入れた代わりに守護神も魔法の力も自分たちを律する掟も失ったニンゲンが、必死に拠り所を求めてこしらえたものなんだよね……。
その他細々とした社会の仕組みもすっかり再編成を余儀なくされたんだけど、魔法、P.E.、翻訳インターフェースというエデンから新たに持ち込まれた要素と、妖精の整備されたインフラがあったおかげで、意識改革よりはスムーズに移行が進んでいます。肉食は即日禁止(魚は3年猶予)になったけど、妖精の人造肉のおかげで普通の人たちにはほとんど支障なかったし。ブツブツ文句言ってたのは一握りの食通家だけ。成熟形態の人口はいきなり増えちゃったけど、1人あたりの環境負荷は大幅に下がったし。経済活動の適合は何より困難な作業でしたが、当面ニンゲンの市場経済を存続させつつ、試行錯誤を経て段階的にエデンの労働価値を基準にした経済と統合させる方向で進んでいます。
これまでモノスフィアの世の中を動かす立場にあった(悪く言えば牛耳ってきた)ほとんどの人は、この世界の仕組みの大激変に対し、たぶん世も末だなんて理不尽な思いを抱いてるんだろうけど……。もっとも、六十億のニンゲンのうちの多くの人、それも頭の柔らかい若い世代の人たちにとっては、ついていけないほど大きな変化はなかったんじゃないかな? 私自身は、これ以上のことはもう望めないっていうくらい、現状に満足しています。
新しいエデンの統治は、各種族1名ずつ選出された委員から成る評議会が設置され、各種の方針を決定する形をとっています。人口70億で他の成熟形態の種族を全部合わせたより多いのに、票は800票の中の1票しかないもんだから、それがニンゲンのこれまでの指導者層にはかなり不評を買ってる模様……。でも、リルケも朋也も、ヒト族が分を弁えるまで1票以上持たせないことは頑として譲りませんでした。
リルケは三神獣の代執行者、評議会議長として、寝る時間もとれないほど忙しい日々を送っています。マーヤは新しい妖精長に昇格しました。しゃべり方はなんか頼りない彼女だけど、張り切ってリルケをサポートしてくれてます。朋也は……Sクラスの妖精を中心とした特殊部隊のトップに立って、地下に潜伏したニンゲン至上主義者の摘発に身を粉にして当たっています。ちなみにゲドたちも参加してます。愛車エメラルド号も活躍中。何しろ、ヒト族も含め見境なく市民に危害を加えようとするどうしようもない連中だし、ほっとけばせっかく一掃されたモンスターがこの世界で復活してしまいかねないので、朋也も厳格に取締っています。ちょっと危険な仕事だけど……ま、彼、強いから心配ないかな?
クルルはウサギ族の村ユフラファに戻ってのんびりしてます。男性不足で悩んでいたユフラファだけど、いまはヒト族の入居希望者が殺到してるんだって。この間会いに行ったら、なんかこいヒトばっかり申請窓口に並んでました……。1年みっちり農作業の研修を受けさせて、使い物になるかどうか見定めるって言ってたけど。フィルは樹海のツアーコンダクターをやってます。神木の見学を申し込むヒトが多くて、彼女も大忙しみたい。マナーを守らせるのがまだ大変だってぼやいてたけど……。
ミオちゃんとはあれ以来、大の親友になりました。後で彼女が打ち明けてくれたんだけど……朋也たちと戦ったときに彼女が言った台詞、あれ本当だったんだって……。フラレた者同士、もっとイイ男見つけるぞって気を吐いてるけど……難しそうだなあ。まあ、私はジュディがいれば別に男なんて要らないんだけどね♪ そう……何が一番の幸せといって、こうして彼女と一緒に暮らせることほど幸せなことはありません。朋也とリルケには本当に感謝しています。あの時は殺してやりたいくらい憎たらしかったけど……。
彼、あのときこうなることわかってたんじゃないかな? 後で聞いてみたら否定したけど。世界を2つとも救ったのはリルケだけど、モノスフィアのニンゲンへの怒りと憎しみしか持たなかった彼女の心を溶かし、アニムスの封印を解く一大決心をさせたのは、結局朋也なんだもんね……。
2人には手伝ってくれってさんざん誘われてるんだけど、なんか私には向いてなさそうな仕事だし(一応これでも作家志望なのだ♪)、ジュディやミオちゃんとの時間を大切にしたいと思って逃げてます。でも、朋也もリルケも2人きりの時間がずっと持てなくてかわいそうだから、1日世界評議会議長くらい引き受けてあげてもいいかな?
fin☆