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 世界を意のままに変える力、か……。神鯨が念押しするように決意を尋ねてくるのも無理はないだろう。朋也は自分の胸に手を当ててもう1度考えてみて、自分の勇気が急速に萎え萎んでいくの感じた。そりゃ、千里たちは助けたい。エデンもモノスフィアも救いたい。代償が恐いっていうつもりもない……。でも、世界を望むままに変え、歴史を抹消することさえできるなんて、人智を超えた力を、一介の高校生にすぎない自分が扱うなんて無理に決まっている。俺は神様じゃないんだもの……。
 朋也はうな垂れて目を閉じると、ゆっくり首を横に振った。
「そう……」
 ニーナは悲しそうに目を背けた。
「残念ね……あなたならきっと応えてくれると思ったのに……。今からではもう明日までにレゴラスに行くことも不可能だわ。せめてあなたの苦しみを減らせるよう、エデンでのあなたの記憶を失くします。さよなら……」
 驚いて声を上げる間もなく、朋也の周りを白い泡が取り囲んでいく。クルルも、マーヤも、レヴィアタンも、そしてニーナも、何もかも見えなくなってしまった。それが、朋也がエデンで見た最後の光景だった……。

 目を覚ますともうとっくに7時半を回っていた。いけね、朝飯食う時間ないぞ!? 夕べは目覚まし時計を入れ忘れていたらしい。〝生きた目覚まし〟ミオもいない。そうだ……彼女、昨日家を出たまま戻ってないんだったっけ……。
 頭がどうもすっきりしない。何だかとてつもなく長い夢を見ていた気がする。なのに、どんな夢を見たのかちっとも思い出せなかった。まあ、夢なんてそんなもんだろうが……。
 よく見たら、制服のまま床に就いてしまっていた。夕べミオを夜中まで捜して歩いて、結局見つからなくて疲れて帰ってきて、そのままベッドに倒れこんでしまったようだ。家に帰ってきたときの記憶がさっぱりないくらいだもんな……。どうしよう、替えなんてないのに。でも、変だな……昨日まで着てたのと全然着心地が違うぞ? 皺もよってないし……。
 そう言えば、昨日は千里とジュディがミオを捜すのを手伝ってくれたような気がするんだけど……。
 この後朋也は、2人が夕べ家を出たきり戻っていないことを知らされることになる──



the end


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