ワンニャン・ブックレビュー(詳細)

動物文学

テイルチェイサーの歌
 著:タッド・ウィリアムズ
 訳:平野ふみ子、平野英里
 ハヤカワFT文庫/1985
行方不明になったGFを求めて旅に出る若きオス猫テイルチェイサーの冒険譚。筆者イチオシの作品。猫文学の最高傑作といっても過言ではないニャ~。ともかく猫好き必読。ウォーターシップダウンの猫バージョンの趣ですが、純粋なファンタジーとしても十分読みごたえがあります。動物文学と幻想文学の双方のジャンルで一級の作品といっていいでしょう。筆者お気に入りのキャラは、味のあるヘンなおっさん猫イートバッグス(正体を知るとますます好きになる)と、敵キャラ"鉄の爪"、そして何より影のヒロインルーフシャドー。彼女の別れ際の台詞、そしてラストの1行がよいのです。自分がオス猫だったらぞっこんだニャ~。
ウォーターシップダウンのウサギたち
 著:リチャード・アダムス
 訳:神宮輝夫
 評論社(文庫・ハード)/1989
こちらはご存じ動物文学の最高峰。新天地を求めるウサギたちの大冒険物語。一難去ってまた一難の上巻、対エフラファ戦で盛り上がる下巻。個性あふれるウサギの仲間たちに、時折挿入される"千の敵を持つ"ウサギの王エル=アライラーの挿話。何度読み返しても飽きないまさに珠玉のファンタジーです。日本中のこどもたちに読んで欲しいニャ~。夏休みの課題図書はこれで決まりニャ! ヘイズル、ファイバー、ブラックベリ、ダンディライアン、カモメのキハール、そして"将軍"ウーンドウォーント、どのキャラも捨てがたいんだけど、やっぱりスライリが一番かニャ。惜しむらくは、ヒロインとして活躍するメスウサギキャラが欲しかった。ラスト前に人間の女の子が登場するのもちょっと興醒め。
クロニクル千古の闇1
オオカミ族の少年
 著:ミシェル・ペイヴァー
 訳:さくまゆみこ
 評論社/2005
悪霊に憑かれたクマに父親を殺された少年トラクは、父との誓いを守るべく精霊の山を目指して旅に出る──。2005年に邦訳が発行された超大作シリーズの第1巻。「指輪」と比べても遜色ない本格ファンタジー。紀元4千年の息づく森、土の匂い、ひんやりとした雪の感触を味わいつつ、物語世界に存分に浸ることができます。それも、アイヌを含む各地の先住民に取材し、実感を得るためにフィールド体験までした著者のこだわりの賜物でしょう。あえて動物ファンタジーに含めたのは、主人公の"弟"にして旅のパートナー、物語の中でカギとなる役割を務める仔オオカミのウルフの存在がとても大きいことから。
さすらいのジェニー
 著:ポール・ギャリコ
 訳:矢川澄子
 大和書房/1983 (新潮文庫も)
猫ファンタジーの古典的名作。主人公の少年がある日突然ネコになって…という展開は、ネタとしてはありふれた感があるけれど、この「ジェニー」を越える作品を書くのは他の作家には無理だろニャ~。グルーミングの歌、「困ったときはまずなめろ」といった表現は、ネコ好きを思わずにんまりさせます。結構有名らしいシャムの"お魚ちゃん"との浮気シーン。児童心理学者が10才の男のコでもそういうもんだとコメントしてましたが、筆者はむしろ猫/女性の持つ魔性を感じたニャ~(^^; ジェニーの魅力も、芯の強さと弱さの両面を持つ(むしろ人間的な)女性らしさからきていると思います。惜しむらくは結末なんだけど・・でも、むしろ「ジェニー」だからこそ許されるオチだニャ(^^;
疫病犬と呼ばれて
 著:リチャード・アダムス
 訳:中村妙子
 評論社/1979 (絶版)
実験施設から逃げ出した2匹の犬ローフとスニッターの物語。ウォーターシップダウンより読者の年齢層はちょい高め。事件を追う新聞記者との2視点構成のこともあり、これはこれで完成された作品だと思いますが、動物実験をモチーフにしたユニークでメッセージ性も高い内容だけに、もっと低年齢向けに作ってもらいたかった気もします。大人向けの動物ファンタジーの需要は、日本じゃイギリスに比べて圧倒的に少ないし…。それと邦訳、登場人物のキツネは、やっぱりカタカナでなく関西弁(博多でも名古屋でもいいけど)のほうがよかったと思うニャ~。
ダンクトンの森
 著:ウイリアム・ホーウッド
 訳:中村妙子
 評論社/1987 (絶版)
モグラが主人公という、異色の大人向け動物ファンタジー。主人公ブラッケンがもともと身体の弱い沈思派タイプなこともあり、冒険というより愛と苦闘の物語。ブラッケンより凶暴な伝統の破壊者マンドレークの印象のほうが圧倒的。その娘であるヒロインのレベッカは魅力的なのですが、ちょっとショックな内容も。。高めの読者年齢設定、冒険色が弱い割に3巻に及ぶ長さ、活躍するのがモグラなせい(?)もあり、日本では残念ながら奮わなかったようですが、英語圏での評価はかなり高いそうです。
ある子馬裁判の記
 著:ウイリアム・ホーウッド
 訳:中村妙子
 評論社 (絶版)
ポニーの所有権をめぐって町を二分する騒動にまでなった裁判のお話。日本で紹介されることの少ないオーストラリアの作家の作品。童心の大人が楽しめる文学が通常のファンタジーだとすれば、本作は解説にもあるとおり、大人の心を持つこどもに向けたファンタジー。読者自身、どちらの陣営も応援したくなるアンビバレンツな感情に悩まされるでしょう。ラストの和解しきれない和解も、現実のこども(というよりニンゲン)の心理をうまく表現していて、深い余韻を残します。
まぼろしのトマシーナ
 著:ポール・ギャリコ
 訳:矢川澄子
 大和書房/1984 (創元推理文庫も)
"動物嫌い"で通っている獣医のマクデューイ。ある日一人娘メアリ・ルーの愛猫トマシーナの具合が悪くなり、彼はトマシーナを安楽死させることに…。ジェニーの姉妹作と呼べる作品ですが(ちょこっと彼女に言及してたり)、趣はずいぶん異にしています。トマシーナが一匹ニ役的存在になっておもしろいのですが、本当の主人公はむしろ彼女を"殺し"たやもめ獣医。父と娘の葛藤・苦悩と信仰がメインテーマなのですね。猫文学ではありますが、ニンゲン色がかなり強いので、ジェニーの猫三昧ぶりを求める読者にはやや物足りないかも。ちょっぴりアイロニカルなラストはいかにも大人の童話作家ギャリコ流。
冒険者たち ガンバと15匹の仲間
 著:斎藤惇夫
 岩波少年文庫/1982
ウォーターシップダウンがエベレストならこちらは富士山。日本の動物文学の金字塔。ガンバはアニメが独自の存在感を誇示した傑作として知られ、筆者も幼少時に楽しんだのですが(ノロイが怖かったニャ~)、原作もそれに負けず面白いです。こちらは仲間の数が倍で、それほど暗い雰囲気はありません。個性的な仲間が知力・体力の限りを尽くし、ふつうに考えてとうてい勝ち目のない敵に挑む──そこがこどもたちの胸を躍らせるポイントでしょう。ラストシーンは胸が痛くなるけれど。
ガンバとカワウソの冒険
 著:斎藤惇夫
 岩波少年文庫/1982
映画化もされたガンバの続編。前作より少し冗長ですが、日の当たらない絶滅危惧種(というよりほぼ確実にニホンオオカミの仲間入りをしているだろうけど)のニホンカワウソにスポットを当てた作品ということで、高く評価したいと思います。筆者自身は楽しめたのですが、この程度でも説教臭を感じる人がいるかもしれません。でも、こどもたちには、ネズミやカワウソの目で世の中を見ることのできないニンゲンに育って欲しくはないニャ~(--;
黒馬物語
 著:シュウエル
 訳:土井すぎの
 岩波少年文庫/1982
馬フリークのイチオシ作品。映画化もされた児童文学の名作。最終的にハッピーエンドにはなるのですが、ニンゲンに翻弄されまくるかなり悲劇的なブラックビューティーの半生が痛々しかった。。それでも、あくまで馬の視点に徹するところに作者のウマに対する深い愛情が感じられ、救われた気になったものです。
黒猫フーディーニの生活と意見
 著:スーザン・フロンバーグ・シェーファー
 訳:羽田詩津子
 新潮社/1999
母と離れてニンゲンに拾われ、その家で暮らすことになったフーディーニが、若ネコに語る半生。猫の人生哲学が書かれていてそれもおもしろいのですが、この作品の一番のポイントは"ネコとイヌの友情物語"。「君はぼくのイヌだ」「君はぼくのネコだ」2匹の会話にグッときてしまうのです。
白い牙
 著:ジャック・ロンドン
 訳:白石佑光
 新潮文庫/1958
オオカミの血を引くホワイト・ファングが、インディアンの橇犬から白人のもとを転々とし、死神の異名をとる闘犬に仕立てられる過酷な半生を送り、穏やかな家族との安住の地を見出すまでを描く。代表的なイヌ文学として知られる作品。不屈の野性と情を併せ持つイヌという存在に魅了された作家の作品は、同様に犬に惹かれる読者の心をも揺さぶらずにはおかないのでしょう。
歌うクジラ
 著:ロバート・シーゲル
 訳:中村融
 創元推理文庫/2000
本作は三部作の1作目にあたる作品で、ザトウクジラのフルナの幼年時代から群れの長、そして父親になるまでの冒険の旅を描いたもの。伝説のクジラ、フラレカナの登場シーンは「ナディア」の船長の友人のエピソードを彷彿とさせます。
猫と庄造と二人のおんな
 著:谷崎潤一郎
 岩波文庫 他
女性をモチーフにした耽美系作品で知られる文豪が、猫を溺愛する男と彼をめぐる前妻、後妻の三角関係をコミカルに描いたもの──という触れ込みで紹介されることが多いけど、これは見る人が見ればわかる、猫と猫好きに向けたオマージュですニャ~。真の主人公は明らかに、アビシニアンと思しき"べっこう猫"のリリーちゃん♪ 微に入り細に入り長々と続く彼女の生態描写は、単なる庄造の猫好きの説明にとどまっていません。実際、谷崎はワンコもニャンコも飼っていたようで、これを読むだけでも主人公に負けず"猫萌え"だったことがうかがえます(狐萌えでもあったらしい)。猫に具わる女性性の描写もあるのだけど、リアルさがまったく失われていないところがミソ。そして、最初はリリーを利用して庄造と後妻福子の仲を裂こうとする未練たらたらの嫌な女だったはずの前妻品子が、リリーと和解して猫の魅力にハマッてしまうという予想外の展開に、彼女に対する好感度が一気に上昇、猫フリークの優柔不断男庄造(リリーにも結局フラレる・・)をも上回ってしまい、思わず薄幸な品子とリリーの二人の幸せを願わずにはいられなくなってしまうのでありました。。
ニルスのふしぎな旅
 著:ラーゲルレーヴ
 絵:香川鉄蔵、香川節
 偕成社文庫/1982
動物・弱いものいじめが好きなガキンチョニルスが、小さくなってみて弱者の立場がわかり、精神的に大きく成長していく物語。NHKのアニメ最終回は「フランダースの犬」と並ぶ傑作。
猫たちの聖夜
 著:アキフ・ピリンチ
 絵:池田香代子
 ハヤカワ(文庫・ハード)/1989
ドイツの作家らしい緻密な推理小説の趣があります。推理小説にはよくネコが登場するけど、この話の場合単なる飾りでなく探偵から被害者、犯猫に至るまで全部ネコ。ネコ度ポイントは高いけど、ファンタジー好みの筆者にはちょっと物足りなさが残りました。ラストが少々荒唐無稽の感があるのと(作風がファンタジーならまだしも)、犠牲者もネコなせいかも(--; 「猫たちの森」という続編も出ています。
グリックの冒険
 著:斎藤惇夫
 岩波少年文庫/1982
ガンバの外伝的な作品に見えますが、実はシリーズの第1作。メインキャラがシマリスのグリックとノンノンの2匹なこともあり、物語のおもしろさの点では上掲2作のほうが上。
アナグマたちと冷たい月
 著:アーロン・クレメント
 訳:大橋悦子
 草思社/1993
ウォーターシップダウンのアナグマ版。実話をネタにしているとのことだけど、もうひとひねり欲しかったのと、登場獣物の個性が少々弱すぎて印象が薄かった。それと、どんどんどんどん脱落者(死者)が出ていく旅の悲惨さのために、やっと新天地にたどり着いてもよかったという気にあんまし浸れなかったです。
牝猫
 著:コレット
 訳:工藤庸子
 岩波文庫/1988
牝猫と彼女を溺愛する夫、欲求不満の新婦との三角関係を描いている点で、谷崎の「猫と庄造と─」の海外版という趣ですが、中味の方はかなりのギャップが・・。谷崎のリリーと違い、本作に登場するサアは同じ猫の女性性を描きながらもリアルさに欠け、作品中の一モチーフという印象でした。庄造と違って主人公のアランにも全然好感が持てんかった(美男という点もあるが・・)(--; 作者の女流作家コレットも、モデルとなったシャルトルーを飼ってはいたんだけど・・この辺りは、洋の東西による動物観の相違とも関係がありそうです。
シルバーウイング
 著:ケネス・オッペル
 訳:嶋田水子
 小学館/2004
コウモリのファンタジーということで期待して読んだのですが・・。序章はよかった。フクロウに焼き討ちに合うシーンから首を傾げ始めました(--; 哺乳類=善:鳥=悪の紋切り型が辛い。ジャングルコウモリというのが出てくるのですが・・オオコウモリのことを指しているのか? コウモリの大半は昆虫食(一部チスイやウオクイなんかもいるけど)。オオコウモリは果食性の温和なタイプ。銀翼コウモリ、彩翼コウモリというのも、和名のない向こうの種の英名をそのまんま訳したんでしょうが、せめてカタカナにして欲しい。

ファンタジー

  
指輪物語
 著: J・R・R・トールキン
 訳:瀬田貞二、田中明子
 評論社(文庫・ハード)/1992
もはや説明も要らない古今東西のファンタジーの最高傑作。人気はガンダルフとアラゴルンに集中しているようですが、筆者の好みキャラはメリー、ギムリ、レゴラス。映画化には原作の奥行きをどこまでキープできるか不安も覚えましたが、なかなか健闘してましたね。3作で片付く長さじゃないのはわかってたことだけど。。難点はとっつきにくさでしょうか。用語・舞台背景の説明にあたる序章が20P以上も占めてたり。忍耐に欠けるといわれるいまのこども・若い人たちが、物語が佳境に入るまでの間に投げ出さないかが心配です。。
大地の子エイラ
 著:ジーン・アウル
 訳:中村妙子
 評論社(文庫・ハード)/1988
紀元前3万年の最終氷期、ネアンデルタール人に育てられたクロマニヨン人の孤児エイラの数奇な半生を描く。ともかく圧倒的なスケール。あまりに遠い有史以前の原始時代を生きる人々に、不思議にもやすやすと感情移入できてしまう。それも雪洞で一夜を明かすことまでやった著者の徹底した取材と想像力の賜物でしょう。死者の墓に花を添えたり、障害者を扶養していたというネアンデルタール人の社会についての研究成果から小説のインスピレーションを得たとのこと。ただ、主人公の受けた辛い事件に絡む基本設定なのだけど、彼らの生殖に関する認識には少々疑問も。
ローワンと魔法の地図
 著:エミリー・ロッダ
 訳:さくまゆみこ
 あすなろ書房/2000
ハリポタ以降多くの出版社が2匹目のドジョウ狙いに走り、玉石混交の感が強い海外ファンタジーの中では、玉に当たる作品といえます。ハリー・ポッターと違い、主人公のローワンは特別な力も自信もない子。むしろそここそ読者が感情移入できるポイント。武勇に秀でた年上の同行者たちが次々と脱落する中で、思いもよらぬ形で使命を果たすことになるところに、物語の醍醐味があるのでしょう。
チョコレート工場の秘密
 著:ロアルド・ダール
 絵:クェンティン・ブレイク
 訳:柳瀬尚紀
 評論社/2005
映画化に合わせて刊行された新約版。読んでみて翻訳者の資質の重要性を思い知らされた感じ。英詩を日本語に訳すと味わい半減(俳句の英訳も然りだけど)はどうしても避けられないのが常だが、柳瀬氏はこの課題を見事にクリアしてますね。処々に出てくるウンパ・ルンパ人の歌は抱腹絶倒請け合い。日英双方の言語に熟達し、なおかつ原語の背景にある世情・文化まで知悉してないと名訳はできませんね。
ぼくのつくった魔法のくすり
 著:ロアルド・ダール
 絵:クェンティン・ブレイク
 訳:宮下嶺夫
 評論社/2005
ロアルド・ダール・コレクションの初回配本のもう一作。著名なイギリスの作家ダールの童話はかなり風刺が効いてて、人によっては胸焼けを起こすらしい。中でもいちばんブラック・ユーモア色が強いとされるこの作品は、正直筆者もブラックすぎてビビってしまった。。こどもに読ませるのはちょっとドキドキ。特に"グランマ"がいる子には。おばあちゃんが孫と連れ立って本屋に行ってコレを買ってあげるシチュエーションを考えるととても怖い。てか想像できないかも~(汗
ハリー・ポッターと賢者の石
 著:J・K・ローリング
 訳:松岡佑子
 静山社/1999
ファンには申し訳ないが、もっと良質のファンタジー作品は数多くあるのになんでバカ売れしたのか理解できない。どっかで何度も見たような冒頭、いじめられっ子から唐突にエリートへ。偏差値分けされた予備校のごときクラス。最近の少年漫画の主人公に近いイメージだろうか。メッセージらしいメッセージも、たいして共感できるところがあるわけでもなく、読者は芸能アイドルのファンに近い感覚で受け入れているのかもしれない。本当に深みのあるファンタジーというのは、夢中になった読者が自ら進んで頭をフル回転させ、世界や自己の存在について想いを馳せてしまうもんじゃなかろうかと思うけどニャ~。。

コミック

     
ガウガウわー太
 バンチ・コミックス
 著:梅川和実
 新潮社
動物問題を深く掘り下げた異質の"ラブコメ"。作者が獣医学部出の方だけあって、様々な動物の症例をネタにしたエピソード作りにはうならせるものがありました。ただ、エンタテイメントとメッセージ性の高さをいかに両立させるかというのはなかなか悩ましいテーマですね。。この際、ラブコメ路線をもっと徹底追求するなり、間隔を空けるなり、苦い良薬をオブラートに包んでさりげなく読者に伝える手法を考えてもよかったのでは。あとは、主人公が狛犬と稲荷の子という設定に難があるかも。せめてお母さんがニンゲンでハーフという設定にした方がよかったかニャ~(月並みだけど)。
小さなお茶会
 花とゆめコミックス(文庫も)
 著:猫十字社
 白泉社
小説家モップとプリン奥さんのメルヘンチックな日常のささやかな1コマを描く。ともかく味があってよいのです。子供ができて家族が増える前のほうがよかったニャ~。
みかん絵日記
 花とゆめコミックス
 著:安孫子三和
 白泉社
オレンジ猫みかんのやわらかなタッチと円らな瞳・・やっぱり動物ものは少女漫画家の手になるほうが体温が感じられてよろしいですニャ~。前作的エピソードに当たる「トムとオレンジ猫」が一押し。
動物のお医者さん
 花とゆめコミックス(文庫も)
 著:佐々木倫子
 白泉社
佐々木倫子のキャラはインパクトのある個性で右に出る者なし。なんといってもやはり菱沼さんと漆原教授でしょう。。実は動物と関係ないオペラの話とかが抱腹絶倒なのだけど。それにしても、ハムテルの最初の予言が当たって、ハスキーは増やされまくってバカ犬ばっかりになっちゃったニャ~。。
新編性悪猫
 著:やまだ紫
 筑摩書房
「生意気言うなよプチブルめ」「お日さま1コあれば」言葉の巧さに圧倒されます。
ワイルドハーフ
 ジャンプ・コミックス
 著:浅見裕子
 集英社
王道少年漫画誌での長期連載を評価したいですニャ~。作者もファン層もとりわけ銀星に思い入れが強かったようですが、人気が今一つだったらしいミレイがあまり活躍しなかったのが残念。
シャミー1000
 「SFファンシーフリー」収録
 著:手塚治虫
 講談社
 (「猫アンソロジー」にも)
猫漫画として数えられてますが、出てくるのは宇宙人。魔性の魅力を備えた動物として描かれる手塚の猫は、多くの人の猫観に影響を与えたのでは。
綿の国星
 花とゆめコミックス(文庫も)
 著:大島弓子
 白泉社
猫耳キャラの走りといわれますが、ストーリーからは著者の猫に対する観察眼と愛が感じられます。猫好きとしては人型でない猫が登場しないのは残念だけど。それにしても、"大人"の少女漫画に比べると、少年漫画はやっぱ"ガキ"向けだニャ~。
What's Michael?
 著:小林まこと
 講談社
細かく見ると、みかんを嫌うのは猫全般の特徴ではないとか突っこめる点はある。アニメを見てコミック買ったこどもは1話に青ざめたんじゃなかろうか、とか。とはいえ、猫漫画ブームに火をつけた存在感の大きさは買い。
火の鳥
 著:手塚治虫
 角川書店
揺るぎない名作。この作品あればこそ、漫画はサブカルチャーではなく、映画や小説、絵画などと遜色ない本物のカルチャーだといえる。どのエピソードも好きだけど、個人的にはスペオペ度が高い望郷編が一番かニャ。鳥、狼、ロボットという具合に異形の女性キャラも多く登場し、今日の日本のオタク界に多大な影響を及ぼした点も間違いのないところ。何年か前にNHKでアニメ化されたけど、歴史観に関わる描写をごまかしてて、故人の作者に大変失礼な話だと思ったニャ~。
MONSTER
 著:浦沢直樹
 小学館
火の鳥が古典的名作ならこちらは現代の名作。浦沢氏自身手塚を意識していたことを語ってますし、「PLUTO」でも明らかですが、やはり最近の漫画にない"深み"が共通点ですね。そして「20世紀少年」で極まった、サスペンス溢れる展開こそ浦沢漫画の醍醐味。とくにコーヒーのエピソードが秀逸でした。
ドラえもん
 著:藤子・F・不二雄
 小学館
手塚、石森と並び(コンビ時代の)藤子もストーリー漫画界の三巨頭に数えられますが、その代表作ドラえもん、原作もいいけど、とくに動物モノの観点でみた場合映画第1作の「のび太の恐竜」を評価したいですニャ~。一連のシリーズ、結構ストーリーがしっかりしてるし、社会問題を訴えるところもあって、子供向けの映画としても悪くないんですよね。CG技術以外見るとこない最近のヘンな子供向けハリウッドアニメには、こういうとこしっかり見習ってほしいんだニャ~。もっとも、筋だけパクられたりもしてるけど・・。
風の谷のナウシカ
 著:宮崎駿
 徳間書店
ファンには悪いけど、特に売れ出してからの宮崎はあまり好きじゃない・・。「ラピュタ」「トトロ」が全盛期だった。その後の作品はどんどん好感度が下がってしまった・・。「紅の豚」はクライマックスのドタバタで興醒め。「千と千尋」も"エキゾチック!"というだけで、わけわからん(実は中味空っぽ)ところがウケた(?)理由としか思えん。最悪は「もののけ」、原作がよかったから期待してたら、全然違ってがっくり。周りが謳う"自然との共存(は難シイ・・というのがホントのテーマだったらしいが)"は、とりとめもなく肩透かし食らわされて終わり、むしろ冒頭の首やら手首やらがスパスパ飛ぶスプラッタな描写だけが目についた(アメリカで年齢指定受けたそうだが・・)。いくらヤクモドキのヘンな動物を可愛がっても、これじゃあねぇ・・。「ああ、こりゃナウシカの反動が来たな・・」というのが感想だったニャ~。文科省PTA推薦的に、"宮崎作品"というだけでマスコミに褒めちぎられるようになっちゃって、本人も嫌気が指して、それが作品に反映されたようにも思える。宮崎後が見えないジブリの焦りもそこここに感じられるし。「猫の恩返し」で若手使ってこけて(私は好きだったんだが・・)、息子引っ張り出して、結局また戻ってきたり・・。
で、「ナウシカ」、はっきり言って映画はよかった。シンプルなメッセージでいいのに、宮崎は逆へと走ってしまった。リアルな現実の毒気に当てられたのか。。「もののけ」と反対に、こっちは原作がボロボロに。テトは扱いに困って殺したとしか思えん。終盤はもう宗教に逃げた感じ。王蟲はバイオの産物でチャンチャン、はないだろ~(--;

教養

  
動物は何を考えているか
 著:D・R・グリフィン
 訳:渡辺政隆
 どうぶつ社/1989
「動物に心はない」と公言して憚らない人には本書を読ませるべし。科学的アプローチが可能なヒトに限りますが…。チンパンジーからハキリアリまで豊富な事例は読むだけでも興味が尽きない。
水辺で起きた大進化
 著:カール・ジンマー
 訳:渡辺政隆
 ハヤカワ/1998
古生物学と分子生物学の最前線の成果を踏まえ、両生類から四肢類、陸棲哺乳類から鯨類という二つのトピックを軸に大進化の謎に迫る。最新の学説が緻密な検証とともに紹介されていて、種の変遷の過程を目の当たりにするかのようです。著者ほどのいわゆる"気鋭の科学ジャーナリスト"は、残念ながら日本には見当たらない気がするニャ~。裏表紙の絵(日本語版)は、メソニクスじゃなくてパキシータスにして、○囲みは後肢にすべきだったニャ~。
進化論は計算しないとわからない
 著:星野力
 共立出版/1998
「人工生命白書」の副題のとおり、進化のシミュレーションに基づく進化論の概説。シミュレーションの前提が、専攻の学生でないと難解でとっつきにくいのですが・・。八目車輪の大進化検証、"囚人のジレンマ"とESSの不確実性などは、興味のある方には非常におもしろい内容です。"創発"の概念は(人工でない)生物学でも扱うべきだニャ~。。
進化にワクワクする本
 朝日ワンテーママガジン
 著:金子隆一、中野美鹿 他
 朝日新聞社/1995
いわゆるムック本。生物畑の新しいトレンドが一般に普及しだすのは本書の発行辺り。80~90年代初め頃の生物学の一般書籍と比べると、隔世の感がある。章立ても大まかに年代を追う形で立てられ、進化史をざっと俯瞰するのにはお手頃。その後も進化周辺の学説は塗り替えられてきてはいるし、定着していない傍系の仮説までごっちゃになってるところもあるけれど。進化論の章では研究者の最近の動向の解説もあるが、中には論旨が飛躍していて首を傾げるものも。
ダーウィンのブラックボックス
 著:マイケル・J・ベーエ
 青土社/1998
いわゆる創造主義者の本。生化学のテキストとしては、まあそれなりに面白くなくもないけどねぇ。。ドーキンスを始めとする進化論者に対する反論は的外れ。比喩もかなりズレてる。現代生化学が創造説をバックアップするなどお門違いもいいところだ。そもそも自然淘汰のメカニズムは行動や形質といった表現型に対して働くものなのだから。物理学者や数学者のいうところの"神"=自然の造化の妙に対する驚嘆と同レベルなら、それほど違和感は覚えないのだが。。
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