「ミオだってジュディと同じくらいはカワイイだろっ!」
「あら、あんたにしては下手に出たわね……」
なにやら物足りなげな口調だ。
「そんなこと言っても、ミオちゃん毛がボサボサじゃない。あんたちゃんとブラシかけてんの?」
「もちろん! 俺が顔洗う時間もないときだって、毎朝のミオのブラッシングは欠かしたことないぞっ!」
「あんた、毎朝顔洗ってないの? やっだー、不潔! こっち寄んないでよねっ、しっしっ」
毎朝洗ってないなんて言ってないんですけど……。
「ジュディだって顔洗ってないだろ~?」
子供じみた反撃をしてみる。
「ジュディは別にいいんだもんね~♥」
首に抱きついてこれ見よがしにキスしてみせる千里。こっちもミオとの仲を見せつけてやろうと思ったが、思い直してやめておく。
そろそろ潮時とばかり、千里は傍らに置いたカバンを手に取った。
「さあ、ジュディ! あんな変態ネコマニア少年はほっといて、さっさとお家へ入ろ♪」
「誰が変態かっ!」
朋也の抗議も無視し、千里は家に向かって歩き出した。ジュディは「もっと遊びたいのに」という顔で朋也たちの方を振り返りつつも、千里の後を追う。
二人の姿が門の向こうに消えると、朋也は「俺たちも帰ろうか」と、ミオを振り返った。と……一緒に見送っていたミオは、いつもの優美な屈伸運動をした後、我が家の方角ではなく、今度は公園の反対側に向かって歩き出した。
「あ、あれれ? また出かけるの?(T_T)」
どうやら千里の指摘したとおり、朋也を出迎えたわけではなく、通りすがりに挨拶してやったにすぎなかったらしい。
「晩飯までには帰ってこいよ~! 車には十分気をつけるんだぞ~~! ガラの悪いオスネコと付き合っちゃ駄目だからな~~~!!」
ミオの姿が小さくなり、スラリとした尻尾の先が茂みの向こうに隠れるまで、朋也は見送らずにはいられなかった。そして、彼女が消えた後、手を下ろして深いため息を吐いた。
「はぁ……」