どうやら千里は、日中の会話で「ミオが家出しても知らないから」と言ったことを気にしていたらしい。まだ家出と決まったわけじゃないが、そうだとしても、もちろん千里の発言と関係あるわけはない。ミオのことを嫌っているようなふりをしていても、千里が彼女のことを心配してくれているのは十分わかっていた。
「わかってるって。別に千里の所為でいなくなったわけじゃないんだから、気にするなよ」
　自分が全然怒ってないことを示すように微笑んで答える。
「うん……。ありがと……」
　少し照れたように千里も微笑み返した。彼女はジュディの方を振り返って、気を取り直したように声をかけた。
「それじゃあジュディ、こんな時間で悪いけど、これからお友達のミオちゃん捜すの手伝ってくれる？」
「ワン♪」
　ミオの捜索が目的だとわかってくれたわけではないだろうが、遅い時間でもまた３人で散歩に出かけられるのは嬉しいと見えてか、ジュディは尻尾を振り回して大喜びしている。それでも、千里の言うとおり彼女の存在は心強かった。ミオの臭跡を捉えたらきっと教えてくれるに違いない。
「じゃあ、早速行きましょ！」
　こうして３人（２人と１匹）はジュディのお友達（そしてもちろん朋也の大切な家族）の捜索行に出発した。