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ミオ: -
千里: -
ジュディ: ++

 ともかく、こんなに怯えているジュディを放っておくわけにはいかない。彼女をかばって前に出ると、今にも抱きつかんばかりに熱い視線を注いでいるビーグルの男をにらみつける。
「ジュディに触るな!」
「ちょっと! それは私の台詞よ、朋也!」
 千里が朋也を押しやって前にぐいと割り込んできた。こんなとこで意地張るなよ。
「何がマイハニーよ! ジュディがあんたみたいのは全然タイプじゃないって言ってるわよ!」
 千里はビシッとそいつを指差して指摘してやった。ジュディが思い切りうなずいている。だが、本人の意向など彼は意に介さないようだ。
「ムゥ、貴様ら、ニンゲンの分際で2人の恋路を邪魔するつもりか!?」
 千里に向かってにらみ返したそいつの顔が不意ににやけた。
「な、何よこいつ……」
 とんだセクハラ犬にさすがの千里もひるむ。
「なんだ、後ろにもいい女が2人もいるじゃねえかよ、グヘヘヘ♥ 野郎はニンゲン1人きりか。じゃあ、そいつをふん縛って残りは全員いただきといくか♪」
 そう言いながら、懐から短剣らしき武器を取り出す。
 なんかこいつ、モンスターよりよっぽどたちが悪いぞ? マーヤの言うところの、エデンを覆う人心の乱れというのは相当進行してるんじゃなかろうか? エデンのイヌ族にはニンゲンに改良された品種はないはずだから、生粋の住民ではなく、モノスフィアからの移住者には違いないが。
「俺様はゲド。ボスの命令でニンゲンどもを引っ立てにきたんだ。おい、そこのお前、おとなしくハニーたちを渡して投降しな。さもないと、痛い目を見ることになるぜェ?」
「マーヤ、もしかして君の話にはだいぶ割引があったんじゃないのか?」
 朋也は振り返って彼女に説明を乞うた。
「あたしもここまでひどいのがいるとは思わなかったわよぉ~~」
 彼女も飽きれているようだ。言葉通りなんだろう。
 ここは〝躾〟が必要かもしれないな。向こうもやる気みたいだし。もちろん、命まで奪うつもりは毛頭ないが。
「ジュディに手を出すのはこの私が許さないわよっ!!」
 言うが早いか、千里がスタンガンを身構え、ゲドと名乗るそのイヌ族の男に向かって電撃を浴びせかけた。おいおい、ちょっと先走りすぎなんじゃないか? 一応電撃は最低レベルに絞ったようだが(P.E.のおかげで放電圧の調節ツマミまで備わったらしい)。
「のわぁぁーーっ!!」
 思わぬ反撃(ていうか先制攻撃だけど)を受けて、ゲドはのけ反った。
「ひ、ひィ~~~ッ! き、汚えぞ、てめえら! 飛び道具を使ってくるなんて。兄貴に言いつけてやるぅ~~」
 ……思いのほか弱かった。先ほどの威勢はどこへやら、すっかり泣き言モードだ。
「ちくしょ~~、このままじゃボスにまた怒鳴られちまう。少なくとも1人はニンゲンを連れて帰らねえと……」
 頭を抱えながらブツブツつぶやいていたゲドは、いきなり前に飛び出して手前にいた千里の手をつかむや、力任せに引き寄せた。



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