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ジュディ: ++

「そうなのか? ううむ、そいつはいただけないな。正直、ジュディのご自慢の鼻をあてにしてたんだが」
「朋也もそう思う? やっぱり地面に近い臭いを嗅がないと駄目なのかなあ?」
 ジュディが本当に地べたに這いつくばって臭いを嗅ごうとしたため、マーヤがあわてて止めに入る。
「きっと今の身体にまだ慣れてないだけよぉー♪ その姿になれば嗅覚だって以前より鋭くなるはずなんだから、そのうち勘が戻ってくると思うわぁー」
「だといいんだけど……」
 そのかすかな匂いの痕跡については、ジュディもその後感知できなかったため、たぶん気のせいだろうということで一行は先に進んだ。
 吊り橋のあった渓谷から先は高台が続いていたが、それももう終わりかけていた。この辺りは森の中でも一段標高が高くなっており、木立も比較的疎らでガレ場の間を道が縫うように走っていた。西側が開けて朱に染まった太陽の光が朋也たちの目をまともに射る。
 朋也は手で庇を作って目の前に広がる森を一望した。森の縁は右すなわち北側に向けて傾斜している。つまり北側の出口は近いと、ここからでも見て取れた。その外側には草色の平地が広がっていた。この照度ではもうはっきりと見えないが、ところどころ道や集落らしい灯りもある。前方には水平にくっきりした筋が走り、その先は他の場所と違い夕日を眩しく照り返していた。海だ。クレメインの森は大陸の西の端近くに位置しているらしい。
 視線を戻しかけたとき、ふと視界の片隅で何かが動いたような気がした。
「ん? いま、何かいなかったか?」
「え? どこ?」
 全員で周囲を見渡す。日の光が少ないうえに、高低差が激しくまだら模様を描く風景の中で対象を見極めるのはかなり難しい。
 朋也はもう一度その気配を感じて、目を上げた。いた。峡谷から続く崖の端の上に人が立っている。シルエットになって顔はよくわからないが、女の子のようだ。気のせいか頭の上にでっぱりが二つあるような……。
 一瞬、彼女と目が合ったような気がした。皆に警告の言葉を発しようとする前に、彼女はひらりと跳び上がると、朋也のすぐ手前に着地した。ゲドにしてもそうだったが、10メートル近い崖の上から一跳びで降りられるのだから、成熟形態の運動力というのはたいしたものだ。
「あんたたちの腕、見せてもらうニャ!」



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