わざわざ作って持ってきてくれたのに申し訳ないとは思うが、やはり拒絶反応が先に立ってしまう。
「悪いけど遠慮しとくよ。今はちょっと、その~……お腹が空いてなくて……」
朋也は頭を掻きながら弁解した。
すると、クルルの赤い目に見る見る大粒の涙がたまっていった。
「食べてくれないの? クルルせっかく一生懸命作ったのに……クルルの自信作なのに……グス……ヒック……」
「ああ……わかった、わかった! 食べるよ、食べるから泣かないで」
女の子の涙は実に恐ろしい武器だ……。仕方ない、いろいろお願いしている身でもあるし。朋也は覚悟を決め、そのビスケット状の〝ビスケット〟を一思いに口に入れた。
……。まあ、恐怖を味わうほどじゃなかったが、これはなんというか、ほとんど粉だ……。味がない。もしかして塩がまったく入ってなかったり……。ところどころ野菜の切れ端や固まりが入っている。野菜ビスケットってのは普通ミキサーとか使うんじゃないのかなあ? 村で評判といっても所詮ウサギのビスケットか……。朋也はむせ返りそうになって、あわてて水筒の水を口にした。液体なしじゃ食うのは不可能だぞ、こりゃ。
クルルは朋也が目をしばたたかせながら呑み込む様子をじっと凝視していた。おそるおそる尋ねる。
「どお? 美味しい?」