今まで見せたことのない熱のこもった視線に、朋也は胸を躍らせた。ミャウは明らかに自分の返事に期待している。何かわからないけど、ともかく応えなきゃ……。朋也は焦った。初めて会ったときから、否応なしに彼女に惹かれていく自分に気づいていた。このチャンスを逃せば、2人きりでこれほど親密になれる機会なんて二度と来ないかもしれない……。
「俺は……君さえ、いてくれれば……」
清水の舞台から飛び降りる気持ちで、やっとそこまで言葉を搾り出す。果たして彼女の反応は!?
顔色をうかがった途端、自分がとんでもない過ちを犯したことを朋也は思い知った──
「何考えてんの?」
ミャウは今まで一度も見せたことのない険しい目つきで、舌打ちしてから一言刺々しく言い放つと、反対側を向いたきり口をきかなくなった。
握りしめた手の中の首輪にじっと目を落とす。ごめん、ミオ。さっきまでお前のこと考えてたのに、いま一瞬お前のことが頭の中からすっぽり抜け落ちてた。こんなことじゃ、お前がエデンに逃げてくるのも当たり前だよな。何やってんだろ、俺……。
もう修復不可能なのかもしれないが、とりあえずなんとかミャウの機嫌を取り繕おうと話のネタを探してみる。
「そ、それにしても、困ったもんだな。せめて檻に入れられた理由だけでも知りたいもんだけど……。あの落とし穴、まるで俺たちが村にやってくるのを承知で狙って掘ったみたいじゃない? ね、え?」
「……きっとバカイヌがどっかでドジ踏んだのね」
たっぷり10秒くらい間を置いてから、やっと答える。膝の間に顔を埋めたまま朋也の顔を見ようともせず。
「何でボクの所為なんだよっ!」
壁の向こうからジュディが抗議の声を上げる。聞こえてたらしい。
「ああ、そういや2人とも隣にいたんだっけ。おおい、そっちは大丈夫か?」
「もうぉ、あたしたちのこと忘れないでよねぇ~」
「ごめんごめん」
「ま、それは冗談として、誰かがあたいたちを陥れるために嘘の情報を事前に村にタレ込んだと考えるのが自然でしょうね……」
「でも、一体誰が? ブブとジョーはそんな真似するはずないし、ビスタであった中でそんなにアヤシイ連中がいたとは思えないけど。あの3人組のイヌ族が、俺たちのこと嗅ぎつけてユフラファに先回りしてたとか?」
「もっとアヤシイやつが若干1名いたと思うけどね……。まあ、今はそんニャことよりここから脱出することを考えましょ。朋也、あんた何か細い針金みたいニャもの持ってニャイ?」