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ミオ: -
ジュディ: +

 またご主人サマのことを思い出したんだろう。彼女はきっと、朋也やミャウたちが構ってやらなければ、四六時中千里のことばっかり考えているに違いない。
「ジュディ……こっちおいで」
 ベッドの自分の隣に手を置き、彼女にやさしく呼びかける──あの頃と同じように。お臍丸出しの格好で寒い部屋の隅にほっとくわけにもいかない。もう毛皮も着てないんだし。そんなことしたら、千里が目を向いて怒るだろう。
 ジュディは一度チラッと朋也のほうを見たが、また背中を向ける。
 しばらく待って、もう一度そっとささやく。
「ジュディ?」
 今度は彼女ももう少し長く朋也のほうを振り返った。向き直りかけたものの、意を決したと見え、もじもじしながら朋也の隣に座る。
 朋也は少し震えていたジュディの肩に毛布をかけてやった。変身した今の彼女を女の子とみなさずに腕を回すのは無理というものだが、これだったらそれほど意識しなくて済む。
「……朋也は前にボクの散歩付き合ってくれたこと、あったよね?」
「結構一緒に行ってると思ったけどな。千里と3人でなら何度も行ってるし、俺とジュディの2人だけで出かけたこともあったろ? ミオがついてきて4人になったときもあったっけな。彼女はいつも途中でどっか行っちゃって、最後までは付き合わなかったけど」
「うん。そうだったね……」
 朋也はなるべく肩の力を抜いて気楽に話しかけようと努めた。こうしておしゃべりでもして彼女の気を紛らすことができれば、それに越したことはない。もっとも、彼女との会話で千里の名前を出さずにいるのは不可能だったが。
「ジュディが千里の家に来てから、あいつ泊りがけの旅行なんて一度も行ってないもんな。修学旅行さえ行くの渋ってるし。雨の日も、風の日も、大雪の日も、台風の日も、毎朝毎晩1日も欠かさず……あいつにとっちゃ当たり前の日課なんだろうけど。俺、正直えらいと思ったよ。ミオとは彼女の気が向いた時に遊んでやるだけだもんな。俺が千里とバトンタッチしたのは、急に親戚の法事が入った時だけだったし。あん時ゃお前、かなりがっかりした顔してたっけ?」
「え? そんなことなかったよ? ヤなやつとだったら一緒になんか行ってやらないもん!」
 彼女も少しいつもの元気を取り戻してくれたようだ。
「3人で河原でフリスビーした時のこと、覚えてるよ。楽しかったな……。ボク、あまりうまくなかったけど」
「お前は昔からちょっぴりドジなとこあるもんな」
「ううん、運動神経は悪くないつもりなんだけどなぁ」
 ジュディはそこで、不安げに朋也の顔を見上げた。
「……ねえ、ご主人サマがボクの今の格好見たら、どう思うだろ?」


*選択肢    びっくりするかも    怖がるかも    たぶんへっちゃら

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