今のは、マーヤが嘘をついていたことを示す明白な証拠に違いなかった。でも……せっかく打ち解けていた彼女の心を閉ざしてしまったことを朋也は後悔した。むしろ彼女を傷つけたことを謝りたい気持ちになった。
「ごめん……そんなつもりじゃなかったんだ。俺、もう何も訊かないよ。マーヤのこと、信じてるから……」
朋也は彼女の苦渋を和らげるつもりで言ったのだが、なぜかマーヤの表情は悲しみの色を濃くしたように見えた。
「……あのねぇ、朋也ぁ。今はまだ言えないこともあるけどぉ……でも、あたしは朋也を信じてるしぃ、朋也にもあたしのこと信じて欲しいのぉ……」
彼女がその小さな身体に多くの苦しみと悲しみを背負っているのが朋也にはわかった。何もかも彼に打ち明けて楽になりたいと思ってることも、今はそれが叶わないことも。できることなら、その苦しみの半分でも肩代わりしてやりたかった。だが、今の彼にできることは、彼女の信頼を受け止めて精一杯の笑顔を返すことだけだった。
「ああ、わかったよ。信じるさ」
2人はしばらくそうやって言葉もなく見つめ合っていたが、何を思ったのか、マーヤはフラフラと扉のところに飛んでいった。朋也の顔の高さにある窓枠にはまった鉄格子を両手でつかむ。怪力でこじ開ける……わけではなかった。ネコのヒゲみたいに触角で格子の間隔を測る。
「う~ん、ちょっと苦しいかしらぁ?」
ブツブツ呟いた後、マーヤはおもむろに格子の間に顔を突っ込み、続いて肩をねじ込ませようとした。
「うぅ~んしょ! むぐぐぅ~っ!」
「お、おい、一体何をするつもりなんだ!?」
一連の行動を首をかしげながらながめていた朋也が、心配げに声をかける。
「ともかくここから早く脱け出さなくっちゃねぇー。あたしのサイズならこの格子の間から潜り抜けられるかもぉ……うぅ~んしょ、こぉ~らしょぉっとぉ……!?」
彼女の動きが止まった。