今のはマーヤが嘘をついていたことを示す明白な証拠に違いなかった。千里の置かれた状況を考えても、この際はっきりと真相を確かめておく必要がある。
「信じたいのはやまやまだけど……だったら、何で俺に隠し事をする必要があるんだい?」
「別に隠し事なんかしてないよぉー! ひどいわぁ、あたしのこと疑ってるのねぇー!? 朋也なんか嫌いよぉー!」
そして、駄々をこねる子供のように泣き出す。開き直ったな? とはいえ、牢屋の中でこれ以上の関係悪化は避けたいし……。仕方なく朋也は自分のほうから折れた。
「ごめん、言いすぎたって。そんなに泣かないでくれよ?」
朋也に懇願されて泣き止んではくれたものの、しかめっ面は直らない。ちょっとは打ち解けてくれたと思ったんだけどな……。
しばらくして、何を思ったのかマーヤはフラフラと扉のところに飛んでいった。朋也の顔の高さにある窓枠にはまった鉄格子を両手でつかむ。怪力でこじ開ける……わけではなかった。ネコのヒゲみたいに触角で格子の間隔を測る。
「う~ん、ちょっと苦しいかしらぁ?」
ブツブツ呟いた後、マーヤはおもむろに格子の間に顔を突っ込み、続いて肩をねじ込ませようとした。
「うぅ~んしょ! むぐぐぅ~っ!」
「お、おい、一体何をするつもりなんだ!?」
一連の行動を首をかしげながらながめていた朋也が、心配げに声をかける。
「ともかくここから早く脱け出さなくっちゃねぇー。あたしのサイズならこの格子の間から潜り抜けられるかもぉ……うぅ~んしょ、こぉ~らしょぉっとぉ……!?」
彼女の動きが止まった。