目の前に映像が映った。宇宙空間のようだ。ゲームセンターのアトラクションみたいだな。身体全体にGがかかり、次第に強まっていく。おい、どこまで上がるんだよ、これ!?
映像の方も宇宙空間を加速するロケットさながらだった。コクピットに座って操縦桿を握っているというより、ロケットの先端に磔にされた気分だが……。左右の星が流れるように飛び去っていく。
ほどなく、正面に明るい点が出現する。隕石だった。まっすぐこちらに突っ込んでくる。目をつぶり、腕を上げて避けようとするが、固定されている上にGがかかっていて動かせない。隕石はそのまま脇を過ぎていく。すぐに次のが現れた。様々な角度から朋也目がけて襲いかかってくる。どうやら小惑星群に突っ込んだというシチュエーションのようだ……。
これのどこが筋トレなのかわからない。あるいは、高G環境下で意思に関わりなく反射的に身体を動かそうとすることで、筋力を上げようというつもりなんだろうか?
ようやく小惑星の襲来がなくなったと思ってホッとしていると、やがてもっと大きい物体が現われた。惑星そのものだ。ひょっとしてこれ、墜落すんの!?
映像は作り物とは思えぬほどリアルだった。惑星は次第に拡大され、ついに画面に収まりきらなくなる。大気圏に突入した。視界が赤みを帯び、狂ったように計器類の針が振れ、サイレンが鳴り響く。Gはますます強力になり、耳鳴りがガンガンし始める。手のひらはじっとりと汗ばみ、胸が圧迫され息をつくこともままならない。
雲の間から地面が見えた。目前に迫る。衝突の瞬間を見る気なんてさらさらなかったので瞼をギュッとつぶったが、身体のほうは否応なく悲鳴を上げていた。
轟音も衝撃もなく、いつのまにかショーは終わっていた。頭の覆いが上がり、ベルトも外れる。時計を見ると15分しか経っていなかったけど、朋也には1時間くらいかかった気がした。全身が汗びっしょりだった。痩身用にはいいかもな……。
フラフラと座席から立ち上がろうとしたが、一瞬よろけて手をつく。
「どぉ~? 面白かったぁ? よかったら何回チャレンジしてもいいわよぉ~♪」
「……遠慮しとく」
朋也にできることは、ジュディとクルルが犠牲にならないよう警告することだけだった──