「ふむ……クルル、島にいるモンスターはそいつ1匹かい?」
「うん。みんな、あいつ以外には会ってないよ」
朋也はちょっと思案した。ジュディの力量ならこの付近に出没する程度のモンスターは問題なく倒せるはずだ。ただ、彼女はこれまで1人で戦った経験がない。きっと自分1人で状況を判断して切り抜けるいい訓練になるはずだ。いつまでも自分が補佐をしていれば腕も上達しないだろう。
まあ、心配がないと言えば嘘になるけど……。でも、本人がやる気なんだから、ここは信頼して送り出してやるべきだろうな。
「わかった。じゃあ、頼んだぞ。くれぐれも無理はするなよ?」
「うん、任せといて!」
腕試しができるとあって、彼女は上機嫌だ。
こうしてジュディは早速クルルに船着場まで案内してもらい、件のモンスターをやっつけに湖の島に1人赴くことになった。
朋也は午前中一杯、ときどき時計に目をやってはジュディの身を案じながら、公会堂で自主トレに励んだ。
正午を回った頃、彼女は首尾よくモンスターを仕留め、戦利品のオパールを抱えて意気揚揚として戻ってきた。皆で昼食をとりながら、ジュディのモンスター退治の土産話に耳をすませる。出現したのは、シルクハットを被ってウサミミを生やした巨大な赤い目玉のようなやつだったという。なんかキタロ○のお父さんみたいだ……。かなり動きが素早く、溶解液らしいものを発射したりしてだいぶてこずったようだが、最後は一撃で決めてやったと胸を張る。
午後になってクルルが島へ薬草とハーブを採りにいった。ジュディは鉱石で手一杯で持ちきれなかったのだ。
朋也たちが2人で午後の稽古を始めたときだった。
「あつつ!」
不意にジュディが左腕を押さえて剣を落とす。
朋也がジュディのもとへ駆け寄って腕を見ると、パットのその部分が焼け焦げたみたいに溶けていて、露出した皮膚が全体に赤っぽく腫れ上がっていた。どうやらモンスターの飛ばした酸にやられたらしい。
「仕方がない、午後の特訓は中止にしよう」
朋也がそう宣告するのを聞いて、ジュディはしょんぼりと肩を落とした。