朋也は負傷したジュディを村の療養所に連れていった。医師がオルドロイに行っていて不在だったため、マーヤが火傷などに効く軟膏を探して処置してくれた。
「ごめんね、朋也。ボクが1人でやるなんて言い出さなきゃよかったんだ……。ボクの所為で……」
ジュディは無念そうにつぶやく。明日に迫った肝腎のトラとの対決に支障が出ることを怖れているんだろう。
いつまでもクヨクヨしていても始まらないので、朋也は彼女の手当てをしながら、努めて彼女を励ますように諭した。
「それを言ったら、ジュディ1人に任せた俺の責任ってことになっちゃうだろ? でも、ジュディはモンスターを自力でちゃんとやっつけられたじゃないか。まあ、ちょっと油断したかもしれないけど、それはそれで1つ勉強になったってことだし。大体、トラは溶解液を吐いてきやしないから大丈夫さ♪ 火傷のほうもそんなにたいしたことないし、あんまり自分を責めるなよ。俺はジュディを1人で行かせたのが判断ミスだったとは思ってないよ? 違うかい?」
「うん……そうだね」
彼にそう言われ、気を取り直してくれたようだ。
「あのさ……ボク、今回の件でもう一つ収穫があったよ」
「へえ。どんなこと?」
ジュディは朋也の顔をじっと見つめ、少し顔を赤らめた。
「エヘヘ、内緒♪」
「何だよ、ニヤニヤして。気持ち悪いやつだな。千里がいない間は俺がお前のお目付け役なんだから、ちゃんと教えろよ?」
「ううん……ご主人サマを助け出したら、ね……」
ちぇっ、やっぱり千里ほどには信頼してもらえてないのかなあ? そんなこと言われると余計気になるじゃんか。
クルルが島から採ってきた薬草は火傷にかなり効き目があったようで、夜には腫れも引いてほとんど問題なく腕を動かせるようになった。ジュディは訓練を再開しようと言い出したが、明日が当日なこともあり、大事をとって2人ともその晩は早めに寝室に引き揚げた。
朝目覚めてみると、朋也たちの枕もとにイヌ族の守護鉱石であるトパーズが一山置かれていた。朝食の場で顔を合わせたミオに礼を述べる。
「ニャンのことかしら?」
ミオは軽く聞き流した。相変わらずだな……。
それにしても、こんなにたくさんモンスターを倒したわけじゃないだろうし、どうやって手に入れたんだろうな? と気になったが、何となく怖くて訊けなかった。まあ、せっかく苦労して集めてくれたんだろうから、ありがたく活用させてもらうことにしよう──