「いやあ、どうしてももう一度フィルの顔が見たくなっちゃってさ♪」
朋也としては一応リップサービスとして言ってみただけなのだが、途端にミオの爪とジュディの鉄拳が彼を襲い、しばらくお待ちくださいモードに入った……。
「ク、クルル、見てないで助けてよ!」
「クルルは暴力には反対だけど、セクハラする人には反省してもらわないと駄目だと思うよっ!」
数分後には、朋也の顔は赤い筋と青痣だらけになっていた。
「あのぉ……」
フィルは虫歯でも痛むみたいに手を頬に押し当て、いかにも困ったという顔をしている。
「そういうときはねぇ~、朋也のあんぽんたぁん!って言うのよぉ~」
「朋也さんの……あんぽんたん……」
フィルに真面目な顔してそんなこと言われるのは、ミオたちに制裁を受けるよりよっぽどショックが大きい……。
すっかり落ち込んでいじけている朋也を脇に置き、女性陣はクレメインの知恵袋を交え作戦会議に入った。トラをめぐって意見交換した後、一行は森に1晩泊めてもらった。朋也は結界の中に入れてもらえず、一晩中モンスターの相手をする羽目になった……。
翌朝、彼らが発つ前に、フィルは回復や治癒用に使われる薬草類、緑色植物種族の守護鉱石であるオリヴィンを持たせてくれた。罰として帰路ずっと朋也が背負っていくことになった……。
結局、丸2日かけてクレメインまで往復して、ボコられ、呆れられ、こき使われるだけに終わり、まさに薮蛇となった朋也であった──