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ミオ: -
マーヤ: -

「じゃあ、マーヤ。悪いけど、彼女と一緒に行ってくれるか?」
「いいわよぉ~」
 マーヤはうなずくと、フラフラと飛んでミオの後ろに従った。
「ゆっくり歩いてるから、焦らず戻ってこいよ」
「わかった。峠の出口に着くまでには追い着くニャ!」
「あたしを代わりに忘れてこないでねぇ~」
「あんたが自分で忘れニャかったらね……」
 大丈夫かな、あの2人? 2人だけなら回復のエキスパートのマーヤをつけたほうが無難だと思ったんだが。彼女たちの後ろ姿を見送りながら、朋也は一抹の不安を覚えた。それにしても、ミオがあんなにあわてるなんて、一体何を忘れてきたんだろうな?
 多少時間のロスにはなるが、朋也たちはペースを落とした。まだ峠に差しかかったばかりだし、昼前には2人も合流してくれるだろう。
 朋也たちがいま歩いているモルグルの峡谷は、切り立った崖の間を縫うように狭い山道が走っていた。一帯は風化・浸食が進んで起伏が激しく、乾燥した斜面には緑も疎らにしか生えていない。荒涼とした景色をながめながら、ゆっくり前進する。
 時折行く手を阻むモンスターは低地の草原に出没したのとは種類が異なり、レベルもこれまでより高かった。回復のエキスパートであるマーヤがいない3人パーティーだと、なるべく消耗を抑えて戦う必要があり骨が折れたが、スキルもそれなりに向上していたのでどうにか撃退できた。モンスターが強くなっているのは、ルビーのアニムスの封印が解かれた曰くの地に近づいている所為もあるのかもしれない。
 不意に彼らの後方で道に迫り出す崖が崩れる音がした。通り過ぎたばかりの道の上に小石が転げ落ち、砂埃を立てる。
「きゃっ!」
 クルルが小さく悲鳴を上げた。
向こうの世界だったら、滑落危険!の標識が立って通行止めになっていても不思議はない道だ。紅玉の解放とともにオルドロイの神殿が崩壊し、ごく最近密かに改修事業に手がつけられるまで交通が廃れていたこともあるのだろうが。
 後ろを振り返っていた朋也たちのまた後ろ、つまり進行方向で、再びもっと大きな音がした。あわてて向き直ると、人の頭くらいある岩がゴロゴロと雪崩落ちていく。当たったら一撃でお陀仏だ。斜面の上を不安げに仰ぎ見ながら、崖を刺激しないようにそろそろと1歩ずつ足を繰り出す。
 突然、バサバサッという羽音とともに、黒い大きな影が彼らの頭上を追い抜いていった。影はすぐ前方の斜面の突端に着地する。
 冷たい視線で真っすぐ朋也を見下ろしたのは、他でもないビスタの酒場で出会った黒い鳥族の女だった──



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