対話の試みはあっけなく破れた。やっぱり駄目か──そのときだった。
「兄貴ッ!」
「兄ィ!」
「兄貴~!」
神殿の奥から3つの影が走り出てきた。落ち零れ三人組、ゲド、ブブ、ジョーだ。
「兄貴! 俺たちにも手伝わしてくだせえ!!」
「わいら、今度こそ兄ィのお役に立ちまっさかい!」
「おいらも一生懸命頑張るのね、ホントにね!」
トラにしてみれば出鼻をくじかれ拍子抜けした格好だが、苦笑しながらも必死に懇願する弟分たちを振り返った。
「そうか、お前たち……嬉しいことを言ってくれるじゃねえか。よし、団体戦で勝負といこう。朋也、文句はないな?」
こうしてついに千里の命を賭した決戦の火蓋が切って落とされた。
不利を承知で、負けを覚悟で、朋也たちは全力で挑んだ。
決着が着くまでどれだけの時間がかかったのかも覚えていない。ジュディはほとんど気力だけで辛うじて立っていた。後方で回復と魔法による支援を担当したマーヤとクルルはへとへとにへばっている。ミオも肩で息をしている。かくいう朋也も膝がガクガクだった。
3人の子分たちは石段によりかかって伸びている。トラは……見た目にたいしたダメージを被ってはいなかったが、爪も闘志もしまい込んで敗北を認めた。
戦闘の立役者はジュディだった。レベルの差が明白な3人を狙ったりせず、彼女は正々堂々真っ向からトラただ1人に打ちかかった。
もし、弱い相手から1人ずつ潰していくというセオリーに則った戦法を選んでいたら、逆にトラが勝ちを譲ることはなかったのではないかと朋也は思った。しかし、それはジュディの性分ではなかった。一歩も退かずに、何度弾かれようと跳ね起きて立ち向かっていく彼女の姿は、トラの心に訴えるものがあったのだろう。
もちろん、マーヤとクルルも限界以上の働きをして彼女をサポートしてくれた。そして、ミオも。雑魚モンスターが相手のときはいつも真面目に戦おうとしない彼女だが、今回ばかりは縦横無尽の働きをしてくれた。
朋也の役どころは専らパーティの盾だった……。男のサガとでも言うのか、女の子たちを護らなくちゃとつい身体が動いてしまう。おかげで、ほとんど満遍なく4人の攻撃を受けていた気がする……。
そして、最終的に勝敗を分ける決め手になったのは、やはり朋也、ミオ、ジュディの3人による息の合った連携攻撃だった。
それでも、手抜きとまでは言わずとも、トラは実力を出し切ってはいなかったように見えた。
「うう……す、すまねえ……兄貴」
「わいらが弱いばっかりに……」
「ホントにね……」
「お前たちはよく頑張ったさ。本当に見違えるくらいにな。ただ、あいつらのほうが失うものが大きかったんだ……」
肩をたたきながら労わりの言葉をかけるのを聞いていると、3人の意を汲み取って戦列に加えたのも子分たちへの配慮だったのではないかと思えてくる。
「さて、負けたら教える約束だったな? 俺がニンゲンを憎むわけを──」