「ともかく、駄目なものは駄目だ! やっぱり危険すぎる! 千里は帰った方がいい。俺、責任持てないし……」
朋也は強情に言い張った。が、千里も負けずに言い返す。
「別にあんたに責任取れなんて言ってないでしょっ!? 何よ、まったく! いいわ、別にあんたの許可なんか得なくたって自分の行動は自分で決めるわ! なんと言われようと私は残りますからねっ!!」
プイと後ろを向く。こうなると、もう朋也の手には負えなかった。本当に頑固なんだから……。
彼が大きくため息を吐いて頭を抱えていると、千里が向き直り穏やかな口調で改めて請願した。
「ねぇ、朋也……そんな冷たいこと言わないでよ。私たち、今この世界でたった2人のニンゲンなんだから、さ……」
朋也はあきらめたようにうなずいた。
「わかったよ……。俺も今度みたいなことが起きないように出来る限りのことするけど、お前も自分の身はちゃんと自分で護ってくれよ? それと、危ない真似はやらかすなよな!?」
「任せなさい♪ ジュディと自分の身は護ってみせるから! でも、それはお互い様だからね?」
千里はそう言いながら胸をたたいて見せた。
大丈夫かな? 大体、ゲドにさらわれたんだって、ジュディをかばってでしゃばりすぎたからなのに。まあ、強力な魔法を撃てるようになった分、心配が減ったのは確かだけど。
「あのね、朋也。私……」
千里は急にしおらしい態度になり、顔を赤らめてうつむいた。朋也がキョトンとして続きを待っていると、照れを隠すように頭を掻く。
「……ううん、やっぱり何でもないや。ともかく、当分一緒なんだから、しっかり頑張ろうね♪」
……まあ、いいか。代わりに別の話題を持ち出すことにする。
「そうだ、ペンダントはジュディに返してもらったかい? 千里がいつも身に着けてたやつだから、彼女に預けた方がいいと思って」
「あ、うん。朋也が拾ってくれたんだよね、ありがとう……」
現物を取り出して蓋を開ける。やっぱりセーラー服の襟の下に着けていたようだ。
「……ねえ、ジュディはこのペンダントの中開けて見たかしら?」
「さあ、どうだろ? お前がいない間、肌身離さず持ってはいたけど、別にいじりまわしてはいなかったぞ? どうして?」
妙な質問をするなあと思いながら、朋也は訊き返した。
「ううん、何でも……」
千里は蓋を閉めるとニッコリと微笑んだ。
「もう夜も晩いし、これから具体的にどうするかはまた明日決めましょ? それじゃ、おやすみなさい♪」
「ああ、おやすみ」
手を振って別れる。そういや、もう真夜中をとっくに過ぎてるんだよな。
朋也はもう一度、西に傾き始めた満月を振り仰いだ。
エデンを救う、か……。トラと交わした誓約は、あまりにスケールが大きすぎて自分には身に余ると、一時弱気になりかけていた。でも、千里がそばにいてくれれば、どれほど困難なことにも立ち向かっていけそうな気がする。
実現への道のりが見えてきたら、そのとき改めて自分の方から彼女への気持ちを打ち明けよう……朋也はそう思った──