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ミオ: ---
千里: ---
ジュディ: +++
マーヤ: --
クルル: --

 ミオとマーヤは、あれでなかなかしっかりしているから、1人でほっといても大丈夫だろう。クルルは心配だが……ともかく早く村に送り届けてやる以外にない。いまはジュディの顔が見たかった。千里を救出するにあたっての一番の功労者だった彼女に声をかけてやりたかった。あいつ、『ご主人サマ』のためにホントよく頑張ったもんな。でも、ベスの死はかなりショックな出来事だったに違いない。今頃千里にたっぷり甘えてるかもしれないけど……。
 彼女を捜して神殿の通廊を歩いていると、声が聞こえてきた。2階のバルコニーの方からだ──

「エヘヘ、ご主人サマァ♥」
「ウフフ、ジュディったらホントに甘えんぼさんなんだから」
 2人は欄干にもたれ、身を寄せ合っていた。ジュディは千里にぴったりしがみついてうっとりと目を閉じている。幸せいっぱいの気分を全身で表現している感じだ。尻尾も千切れんばかり。よっぽどスキンシップに餓えていたんだろう。
 千里は向こうにいたときと同じようにジュディの髪を優しくなでてやっていたが、やがてちょっと困ったような顔をしてジュディに懇願した。
「ねえ、どうでもいいけど、その『ご主人サマ』って呼び方、やめてくれないかな? 私、ジュディの〝主人〟を気取るつもりなんてこれっぽっちもないのよ? むしろ〝お姉さん〟かな♪ だから、今度からちゃんと『千里』って呼んで? 『お姉さん』でも『お姉ちゃん』でもいいけど……ね?」
 〝お母さん〟と呼ばれるのはさすがに嫌みたいだな……。
 少しためらった後、ジュディはきっぱり首を横に振った。
「ううん……でも、ご主人サマはやっぱり〝ご主人サマ〟だもん♪ ボクだって、別に自分が奴隷とかいうつもりじゃないんだよ? ご主人サマは……ボクが小さい時からずっと見守ってくれて……一緒にお散歩して……一緒に寝て……そばにいてくれるだけで幸せになれるから……。だから、なんて言われたって、ボクにとっては『ご主人サマ』だよ!」
「もう、しょうがないなぁ……」
 苦笑する千里。これ以上言っても効かないとあきらめたようだ。まあ、その呼称は主人面をひけらかさない彼女だからこそ通用するんだろうが。
 とても出る幕じゃないな……。2人水入らずのところを邪魔しては悪いと思い、朋也はそっとその場を離れることにした。2人にとっては、どんなに辛いことがあっても、お互いの存在が何よりの支えになってくれるに違いない。
 ちょっぴりご主人サマがうらやましかった。さて、自分もミオを捜しに行くか──



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