このまま指をくわえて眺めているわけにもいかない。放置すれば血を見る事態に発展しかねないし……。とりあえずこの場の雰囲気を和らげようと朋也は試みた。
「ああ、遅くなって悪い! 俺、もう起きたから──」
そう言いながら、2人の間に一歩踏み出したときだった。
「アメジスト!!」
「サファイア!!」
2人が同時に叫ぶ。彼女たちの放った攻撃魔法は過たず中間点にいた朋也に襲いかかってきた。
「うぎゃ~~~~っ!!」
寝起きにダブルの魔法ダメージはこたえる……。2人とも、ひょっとして身内なのにセーブもしてないのか?
「あっ! と、朋也!?」
「あちゃ~~」
2人してボロボロになった彼のもとに駆け寄る。同着だった。
「待ってて、いますぐ手当てするから」
「あたいがやるから千里は引っ込んでニャさいヨ!」
「駄目っ! ミオちゃんの毛づくろいより私のクリスタルのほうが回復量が上なんだから!」
「そんニャことニャイわよっ! あたいのは朋也が相手のときは効果が違うんだから!」
おいおい、そんなに両手を引っ張らないでくれ……。どうにか身を起こして2人を制する。
「クルルに頼むからいい……」
キョトンとして朋也を見ながら2人の動きが止まる。それから、彼はまず千里のほうを向くと、釘を刺すように言った。
「千里! 俺たちがお前を無事に救い出すことができたのは、ミオが情報提供してくれたりいろいろ手を貸してくれたおかげなんだぞ!? 彼女にはもうちょっと感謝の気持ちくらい持ってくれてもいいんじゃないのか?」
「むー……」
朋也に諌められ、千里はしゅんとなった。少し恨めしげな視線が混じっていたが……。
「そうそう、そういうこと♪」
今度ははしゃぐミオを振り返る。
「ミオも! 千里はお前を捜すのを手伝ってくれたおかげで、この世界に来る羽目になっちゃったんだぞ? その所為で、生贄にされて命まで落としかけたんだし……。少しは彼女に遠慮したらどうだ?」
「ふみゅ~……」
朋也の説教を受け、たちまち口を尖らせる。
「さあ! しばらくの間はお互いに協力し合わなくちゃいけないんだから、いつまでもつまらないこと(……)でケンカしてないで仲直りしなきゃ♪」
千里はため息を吐いてうなずくと、ミオに歩み寄っておずおずと右手を差し出した。
「ごめんね、ミオちゃん。ハイ、これで仲直り♪」
ミオは左手を差し出した……。
朋也は頭を抱えた。こんな調子じゃ先が思いやられるな──