「朋也のケチンボ~」
見る見る涙目になる。
「幼稚園児が2人もいるニャ~……」
「あんた子供じゃないんだから、吹かせてあげなさいよ?」
千里が呆れた声で叱咤する。
フィルから預かったのは俺なのに……。朋也は渋々神樹のフルートを彼女に渡した。
クルルの機嫌はたちまち直った。
「やったあ!」
ながめつすがめつする。遠眼鏡じゃないぞ。吹くなら早く吹けよ。
「じゃあ、これから吹くから、ちゃんと聴いててね♪」
クルルはちょっとかっこつけて1小節分のメロディを奏でた。俺のほうがもっとうまいのに。
クレメインの神木前でマーヤが呼んだときと同じように、葉擦れの音がサラサラと聞こえたかと思うと、目の前に緑の光が集まり始める。やがて姿を現したのは、豊かな緑の髪を持つ知的な目をした美しい女性──そう、フィルそっくりの……ていうか、本人じゃないか!?
「ご無沙汰です。朋也さん、皆さん。お元気でしたか?」
「あ、あれ!? フィル!? だって、ここはクレメインじゃなくてエルロンの森じゃ──」
「私たちは森と森の間でもテレポートが可能ですから。今回はエルロンの精に無理を言って交代してもらったのです。私なら皆さんの事情をよく存じてますし、お力にもなりたかったので……」
びっくりして目を瞬かせている朋也にそこまで説明してから、フィルは少し不安げに尋ねた。
「あの……ご迷惑だったでしょうか?」