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ミオ: --
千里: ++
クルル: -
フィル: -

 朋也は結局ミオとクルルのを1個ずつ、千里のを2個いただくことにした。客観的評価となると、彼女に分があるのは否めない。はたしておにぎりと呼べるかどうかも怪しいクルルのは言うまでもなかったが、ミオもいくら器用だといっても千里の腕には太刀打ちできなかった。
 具の梅干はダミーなだけに何だかジャムっぽい気もしたが、カツブシを加えて和風の味付けを工夫してあり、家庭の味がした。おにぎり1つによくそこまで凝るなあ。食べきるのがもったいなく思えてくる。
「みんなには悪いけど……」
 2周目で朋也が3人の視線を浴びつつ千里の昆布を手に取ると、彼女は素直に喜びを表した。
「エヘヘ、ありがとね♥」
 一方、選に漏れた他の2人はあからさまにがっくり肩を落とした。中でもミオは立ち上がって憤然と抗議し始めた。
「フミュ~、これのどこがいいってのよ!? 全然たいしたことニャイじゃニャイの!」
「あら、順当な結果だと思うけど? ミオちゃんが私に勝つなんて百万年早いわよ。オ~ッホッホ♪」
 千里が高らかに勝利宣言すると、ミオは癇癪を爆発させた。
「キィ~ッ、悔しーっ!! こうニャッたらこうしてやるニャ~! それっ、おにぎり合体ニャー♪」
「あっ、おい!」
 ミオはいきなり朋也の手から千里のおにぎりを奪取したうえ、残りの2つもつかんで全部を団子状にくっつけた……。
 突然のハプニングに千里もあんぐりと口を開けていたが、やがて猛然と怒り出す。
「あーっ、なんてことすんのよ~っ!? せっかくの私の力作が台無しに……。このイタズラニャンコめーっ!」
 結局、フィルにも一部負担してもらいつつ、朋也が団子になった3人のおにぎりのほとんどを食べることになった。その後ミオはケロッとしていたが、千里はずっとご機嫌斜めだった。
 食事が済んで一服しているとき、朋也はふと思い出した。そういえば、フィルは妖精の隠れ里のことは知ってるのかな? エルロンの森の精には訊いても口チャックだから無駄だってブブは言ってたけど、彼女なら教えてくれるかも。そう思った朋也は試しに尋ねてみた。
「ねえ、フィル。無理に答えてくれなくていいんだけど、隠れ里の噂があるの、知ってる?」
 少し間を置いてから答える。
「ごめんなさい、彼女たちとの誓約でお答えできないことになっているもので……」
 ……。それって思いきりバラシてるじゃん。
「他でもない朋也さんだからお教えするんですけどね。一応、他の住民の皆さんには内密にということで」
「ふみゅ、情報屋ニャら高く買ってくれるかもニャ~♪」
 ミオがニヤリとして頭の中で算盤を弾く。
「こら、ミオ! もちろん誰にも言わないさ。ただ、ちょっとマーヤのことが気になったもんでね……」
「彼女のことは、注意を払っておきます。エルロンの精にも伝えておきますわ」
 フィルがそう言ってくれるなら安心か。何せ2人は親友の間柄なんだもんな。
 一行はそれから日暮れまで歩き通し、行程の3分の2を過ぎたポイントで夜を明かすことになった。
 歩き尽くめで疲れていたため、みなあっという間に眠りに就く。千里は、自分が火の番をすると言い出して見張りについた。ジュディのことを考えるとなかなか寝付かれないのだろう。朋也は適当な時間に交代するから起こすように言うと、横になった──



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