朋也は公正さを厳守するべく、各1+1/3個を自分の取り分と決めた。
「具はどうすんのよ?」
千里が突っ込む。細かいこと言うなよ……。
「真ん中を含むように分ける……」
フィルを待たせないため、先に分割作業にとりかかる。厳密に1:2に分けるのはもちろん無理だったけど……。おまけに、ご飯が潰れちゃったなあ。力作が無惨に破壊されてミオはご機嫌斜めだ。
でも、なぜかフィルは嬉しそうだった。3人の〝作品〟をそれぞれせっせと持ち上げてフォローまでしてくれた。彼女の事細かな寸評は、どっちかといいうと化学組成の分析みたいだったけど……。
食事が済んで一服しているとき、朋也はふと思い出した。そういえば、フィルは妖精の隠れ里のことは知ってるのかな? エルロンの森の精には訊いても口チャックだから無駄だってブブは言ってたけど、彼女なら教えてくれるかも。そう思った朋也は試しに尋ねてみた。
「ねえ、フィル。無理に答えてくれなくていいんだけど、隠れ里の噂があるの、知ってる?」
少し間を置いてから答える。
「ごめんなさい、彼女たちとの誓約でお答えできないことになっているもので……」
……。それって思いきりバラシてるじゃん。
「他でもない朋也さんだからお教えするんですけどね。一応、他の住民の皆さんには内密にということで」
「ふみゅ、情報屋ニャら高く買ってくれるかもニャ~♪」
ミオがニヤリとして頭の中で算盤を弾く。
「こら、ミオ! もちろん誰にも言わないさ。ただ、ちょっとマーヤのことが気になったもんでね……」
「彼女のことは、注意を払っておきます。エルロンの精にも伝えておきますわ」
フィルがそう言ってくれるなら安心か。何せ2人は親友の間柄なんだもんな。
一行はそれから日暮れまで歩き通し、行程の3分の2を過ぎたポイントで夜を明かすことになった。
歩き尽くめで疲れていたため、みなあっという間に眠りに就く。千里は、自分が火の番をすると言い出して見張りについた。ジュディのことを考えるとなかなか寝付かれないのだろう。朋也は適当な時間に交代するから起こすように言うと、横になった──