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ミオ: +
千里: --
マーヤ: --
クルル: -

 墓を見つめて腕組みしながらポツリと漏らす。
「千里に言われたことがそんなにショックだったのかな……」
 千里はへたりとその場に座り込み、情けなさそうに朋也を見上げた。
「そんな!! 私……もう一生自分を許せないかも……(T_T)」
「ニャハハ、許すニャ許すニャ~♪」
 千里をいじめて楽しんでいるみたいだ……。
「ちょっと待ってよよ! これがマーヤのお墓だと決め付けるのはまだ早すぎるんじゃない?」
 クルルが逸るみんなを制して自分の意見を述べた。
「そ、そうだな。千里、とりあえず気をしっかり持て!」
「う、うん……」
 そうは言いつつも気になった朋也は、あらためてその墓に目を寄せてみた。何かの文字が掘ってある。エデンの文字は種族を問わず共通で、シンプルなキャラクターセットから成っていた。だが、翻訳エージェントは読み書きまでサポートしておらず、朋也にはまだ読むことができなかった。ミオに場所を譲って目を通してもらう。
「#9109557──それだけね」
 ?? 戒名でも墓碑銘でもない、数字の羅列? はて、本当にこれはお墓なんだろうか? という疑問が沸く。まあ、ここに彼女が眠っている可能性は薄れたとはいえそうだが……。
 腕組みをしながら謎の墓をじっと見つめていたとき、後ろのほうで誰かがはっと息を飲むのが聞こえた。
 振り返ると、入口の近くに妖精がいた。しかも、あの羽の模様はもしや!? 妖精の顔が見分けがつかないほどよく似ているということは、ビスタのセンターに寄ったときに知ってびっくりしたけど、いまの妖精は顔立ち以外の特徴も含め、マーヤにそっくりだった。少し離れていたし、あっという間に泉の前に通じている別の径を曲がって見えなくなってしまったので、確かめられなかったが……。
 4人は顔を見合わせてうなずくと、その妖精が飛び去っていった方角に進んでいった。細い径を幾度か曲がると、緑の生垣のようなものが正面に出現した。それは道の左右に伸びて、前方の空間を緩やかなカーブを描いて取り巻いている。遠くからでは木立の中に溶け込んでほとんどわからない、巧みなカモフラージュだった。
 近寄ってみると、困ったことに入口がどこにも見当たらない。まあ、高さは2mもないので乗り越えるのはそれほど難しくないが。ミオとクルルはヒト族2人の前で軽々と障害を飛び越した。朋也もネコスキルを使って上に登り、千里に手を貸してやる。先行した彼女たちの隣に並んで、2人は里の中を見渡した──



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